アルゼンチン「らしい」準決勝進出だ。オランダに2点差を追いつかれながらも得意のPK戦で勝ちきったのも「らしい」が、それ以上にイエローカード乱発の荒れた試合に「はい、出ました」と納得した。

オランダの攻撃をラフプレーで止め、相手を挑発する。相手ベンチにボールを蹴りこみ、試合後は主審と相手に毒づく。アルゼンチンには申し訳ないが、W杯では見慣れた光景。メッシの陰に隠れているが、これもアルゼンチンの姿だ。

70年メキシコ大会でイエローカードが導入されて以来、最多117枚をもらったチーム(日刊スポーツ調べ)。1試合平均1・7枚は、ブラジルやドイツの1・6枚を上回り、オランダの0・9枚の倍近い。

もともと激しいプレーが持ち味だ。ただ、気迫の空回りがラフプレーとなり、気持ちが高揚して暴言になる。66年イングランド大会では、主審に暴言を吐いて退場となった選手が、エリザベス女王が歩くレッドカーペットに座り込み。相手のイングランドからは「アニマル」とまで呼ばれた。

90年イタリア大会では今回と同じようにカメルーンに初戦で敗れたが、その後はマラドーナ中心に勝ち上がり。ユーゴスラビアと地元イタリアをPK戦で破ったが、西ドイツとの決勝は累積警告で主力4人が出場停止。史上最低の決勝と言われ、準々決勝で清算される現行ルールにつながった。

ラフプレーをするだけではなく、挑発も「得意」。98年フランス大会ではシメオネの挑発で若きベッカムが退場処分になった。「勝利への執念」と言えば聞こえはいいが「勝つためなら何でもやる」チームだ。

隣国ブラジルへの対抗心がある。独特のリズムで横にも動くブラジルのドリブルに対して、スピードに乗った細かいタッチで縦を突く。攻撃的なブラジルと比べて、実は守備的。ケンペスやマラドーナ、メッシら攻撃は前線の数人に任せ、残る選手は徹底して守る。そんな文化なのだ。

相手ボールを奪う際の激しさも武器。戦術的なファウルも容認される。当然のようにカードも増える。近年は審判の判定も厳しくなり、前回大会からはVARも導入された。審判の目を盗むのは難しくなったが、奥底に潜む「アルゼンチンらしさ」は隠せない。

いいとか悪いとかではなく(ラフプレーがいいとは言えないが)、これがアルゼンチンのサッカー。「らしさ」なのだ。シメオネ、マスチェラーノらに流れている伝統の守りはすごみさえ感じたし、その国ならではのプレーが見られるのもW杯の魅力だ。

マラドーナに「神の手」をやられたイングランドなどアルゼンチンを嫌う国も少なくない。それでも。勝つ。「悪役」(アルゼンチンファンには申し訳ないけれど)は、憎らしいほど強い方がおもしろい。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)

PKを決めた後にオランダベンチのファンハール監督に向けて両手を耳の横につけるポーズをするメッシ(ロイター)
PKを決めた後にオランダベンチのファンハール監督に向けて両手を耳の横につけるポーズをするメッシ(ロイター)