モロッコが「ホーム」カタールで快進撃を続けている。1次リーグからスタンドは応援一色。

ポルトガルとの準々決勝では、相手がボールを持つと大ブーイング、強固な守備で奪うと大歓声が起きた。モロッコ人だけでなく、カタール人も大声援を送っている。

「開催大陸が強い」歴史がある。優勝こそ欧州勢と南米勢以外にないが、メキシコで開催された2度の大会ではいずれも開催国がベスト8入り。02年日韓大会では韓国が4強入りし、10年南アフリカ大会ではガーナが準々決勝に進んだ。

今大会もアジア勢の躍進が目立った。初めて3チームが決勝トーナメントに進出。日本がドイツとスペインに勝つなど、強豪国からの白星も目立った。もっとも、カタールにとっては日本も韓国も遠い存在。便宜上「同じアジア」かもしれないが、応援するのは「同じアラブ」のモロッコだ。

「アラブ」とは、西アジアから北アフリカにかけてアラブ人が住む地域。主にアラビア語を話し、イスラム教を国教とする。今大会には、サウジアラビアとチュニジアも出場。初の「アラブ」開催の大会で「アラブ勢」が躍進している。

W杯では圧倒的にキリスト教の国が強い。サッカーの発祥がイングランドだから当然といえば当然だが、過去ベスト4に入った国でキリスト教徒が多数を占めていないのは02年日韓大会のトルコと韓国だけ。モロッコは、イスラム教を国教とする初の4強進出になる(トルコはイスラム教徒が多いが国教ではない)。

セルジオ越後氏は「キリスト教は日曜日が安息日。商店も休みだからサッカーしかやることがない。だから強い」と話した。かつてサッカー(フットボール)は教会での礼拝の後にするものだった。今は宗教に関係なく世界中で親しまれているからこそ、モロッコの快進撃は意味がある。

12日、国際サッカー連盟(FIFA)技術研究グループ(TSG)の会見が行われた。同メンバーで元ナイジェリア代表のサンデー・オリセー氏はモロッコの4強入りを「アフリカ初」と称賛するとともに「アラブ初」とも強調(ナイジェリアはアラブではないけれど)。大会を通して「アラブ」が注目されている。

決勝進出を争うフランスは、モロッコにとって旧宗主国。フランスにはモロッコ系移民も多く「モロッコ人の誇りを持って戦う」というレグラギ監督自身も、フランス生まれだ。準決勝には歴史的因縁も絡む。

ジブラルタル海峡を挟んで支配された歴史を持つスペイン、ポルトガルを立て続けに破ってベスト4に進出したモロッコ。アフリカだけでなく、開催国カタールなどアラブ諸国、全世界16億人と言われるイスラム教徒の思いを背負って、フランスに挑む。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)

モロッコ対ポルトガル 試合前、声援を送るモロッコサポーター
モロッコ対ポルトガル 試合前、声援を送るモロッコサポーター
モロッコ対スペイン 応援するモロッコのサポーター(撮影・パオロ・ヌッチ)
モロッコ対スペイン 応援するモロッコのサポーター(撮影・パオロ・ヌッチ)