昨年は悲しいクリスマスになった。インカレ(全日本大学サッカー選手権)準決勝。国士舘大は新潟医療福祉大に0-1で負けた。夏の総理大臣杯で優勝して夏冬連覇を目指した。勝ったら国立で元日決勝だった。負けるはずがないと思ったが、思い上がり、うぬぼれだったな。国士舘大は国立を壊す前の最後の国立(13年度インカレ)で決勝戦を戦って大阪体育大に1-3で負けている。今回は新国立になって初の国立決勝が組まれた。10年前の借りを返したかったが、国立のピッチにすら立てなかった。

7年ぶりに熱が出たね。38度だった。高熱が出たのは、胆石で病院にお世話になって以来だ。コロナかな、インフルエンザかなと心配したが、医師からは「疲れです」と言われた。負けたショックは想像以上に大きかったのだろう。おかげで、年末年始は寂しく過ごしたな。これからどうしていくかを考える時間でもあった。

年が明け、熱が下がり、コーチ全9人を集めた。「うちには160人以上の部員がいる。これだけ選手がいて勝てないのは、オレたちの責任だね」と頭を下げた。卒業する4年生を除き、126人の部員がいる。1月14日から練習再開。これまでと練習法を変えた。実力を度外視して、2つのグループに分けて同じメニューを与えた。練習時間は、集中力が保てる限界と言われる110分ジャスト。1分少ない時はあっても、1分をオーバーすることは絶対になし。

国士舘大はA(リーグ戦)、B(Iリーグ1番手)、C1(同2番手)、C2(同3番手)、C3(同4番手)と、5チームある。4月に組み分けするが、シーズンが始まってからも毎週のコーチングスタッフミーティングで選手の入れ替えがある。そのため、5チームとも同じメニューをこなし、目指す方向が一致しないと、選手を入れ替えるだけではうまくいかない。

今回の2つのグループに分けた練習では、ボールを使うトレーニングも当然刺激になるが、持久走では上手い、下手は関係ないわけだから、下部チーム所属選手は必死で頑張る。トップチームの選手もあおられて力を振り絞る。一体感とともに相乗効果があった。すぐに効果が出るかは分からないが、楽しみなシーズンになるのは間違いないね。

シーズンが始まると、各チームをコーチ1人が担当するが、シーズン前の2グループの練習はコーチ全員が見守ることにした。今までシーズン中にも各コーチは、自分が担当するチームの練習予定がない時など、他のチームを積極的に見に行ってはいるが、回数は限られる。しかしシーズン前の強化時期に、下部の選手が上のチームのコーチに練習を毎日見てもらえることは大きなモチベーションにもつながる。

これは国士舘大の小さな試みだが、視野を広げれば、日本サッカー協会が目指す「ジャパンズウェイ」につながるはず。世代、カテゴリー、性別など関係なく、サッカーファミリーが「W杯のトロフィーを掲げる」一念で同じ方向を目指すことは大事だ。日本協会はその道のりを歩んでいる最中なのだ。

そのフィロソフィーを共有し、行動に移す。強豪国はどこも独自のサッカースタイルがあるように、日本も独自のスタイルを確立させることは絶対に必要だ。要するに、日本サッカーの構築こそが「ジャパンズウェイ」実現の近道といえる。日本代表の森保一監督が、それに向けて尽力していると聞いているので、うれしい限りだ。

そのミニバージョンとして今季「国士舘大の道」を歩み始めた。5つのチームが同じ方向を向いて、同じサッカーでシーズンを戦い抜くことで、どんな結果が出るか。新しく入部してくる1年生たちが、我々のアグレッシブなサッカーになじんでくれるか。国士舘大のサッカーは今後も続くわけだから、ここでしっかりとした道筋をつくることは重要だね。 (ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー人生70年 国士舘大理事長 大澤英雄」)