最近見たスポーツで最も興奮したことと言えば、10月15日のマラソングラウンドチャンピオンシップ(MGC)だった。36歳のベテラン川内優輝が大雨の悪天候の中、序盤から勢い良く大逃げを打った。
「無謀だ」「すぐに落ちるだろう」。誰しもそう思ったのではなかろうか。
雨に打たれながらの激走が続いた。15キロをすぎ、20キロをすぎ、30キロをすぎ、それでもまだ背後には誰もいない。その懸命な姿は感動的だった。
ようやく35キロすぎで後続集団の反撃の前に追いつかれたが、そこからまた粘った。のみ込まれることなく、逆に上位4人に残り、ラストまで見せ場をつくった。
「ひょっとしたら…」
2位以内ならパリ・オリンピック(五輪)が即時内定。また3位なら五輪の可能性が半分くらい残る中、惜しくも先行する大迫傑から7秒遅れの4位だった。
そのレース後、口にした言葉が心に響いた。
「年齢はただの数字」
川内は強い覚悟をもって挑んでいた。
「無謀」ではなく、130回目の経験に基づき悪天候を利した「戦略」だった。取材者として、とかくスポーツを年齢で判断してしまいがちだ。こういう場面を遭遇すると、自分が先入観に縛られていることに気づかされる。
■中学生でJリーグデビューの逸材
36歳の川内の激走からちょうど1週間。今度はその半分の18歳のサッカー選手の姿を見つめた。J3YSCC横浜(YS横浜)の橋本陸斗、2005年(平17)生まれだ。
J2東京ヴェルディから今夏、育成型期限付き移籍で加入。10月22日、対テゲバジャーロ宮崎戦(ニッパツ三ツ沢球技場)。これが3試合目だった。
橋本は15歳だった21年2月26日のJ2愛媛戦で、15歳10カ月26日でJリーグデビュー。久保建英(FC東京)、森本貴幸(東京V)に次ぐ史上3番目の若さ。「中学生Jリーガー」として話題をさらうと、その4月上旬にはプロ契約も締結した逸材である。
8月12日の福島ユナイテッド戦(1-1)に途中出場した際にもゴール脇からカメラ片手に間近で観察したが、その迫力には目を奪われた。上背は170センチと小柄だがスプリント力とパワフルなフィジカルを活かして攻守にガンガン走る。さらに小回りの利いた巧みな技術に、左足でのパンチの効いたシュート。かつてブラジル代表で活躍したロベルト・カルロスのような印象を受けた。
その後の負傷離脱により約2カ月も公式戦から離れていたが、コンディションが回復し、この日の宮崎戦で2カ月ぶりのベンチ入りとなった。0-0の後半12分から出場すると、その能力の高さを披露した。
鋭いドリブルを武器に、左サイドを縦突破し、ゴール前へ鋭いクロスを供給した。宮崎は退場者が出て10人。この橋本の投入で完全にYS横浜がボールを握り、波状攻撃を仕掛ける展開が続いた。
そして後半39分、均衡が破れた。橋本を絡めた左サイドの連係から、MF小島秀仁がクロスボールを送るとMF古賀俊太郎が頭で押し込み、これが1-0の決勝点となった。好機を演出し続けた橋本あってのゴールだったと思う。
■「なんでウソつくんですか」
試合後、将来性にあふれる18歳の言葉に耳を傾けた。
「試合に勝てたのは良かったし、最低限のプレーはできた」と言いつつ、「結果(ゴール)を出したかった」「(自分のプレーには)まだまだ満足していません」と物足りなさを口にした。その上で「残り6試合で5点を取りたい」と強気に宣言した。
たび重なるケガの影響から、今季リーグ戦は途中出場の3試合のみで無得点。それだけに「6試合5ゴール」はさすがにリップサービスだろうと考え、「本気でそう思っていますか?」と返した。すると、こちらの目をまっすぐ見つめながら「なんで(自分が)ウソつくんですか」。
「自信がある?」と問うと、「はい」。
さらに「どういうプレーを見てもらいたいですか?」とたずねると、「このチームに来た覚悟を見てほしい」。
自分自身を信じて疑わない、むき出しの感情がこちらの胸に突き刺さった。
まだ高校生年代の18歳という思いがどこか頭にあったのだが、それは先入観にすぎない。キャリアからすれば、2年前にJリーグで記録的なデビューを果たし、れっきとしたプロ3年目だ。むしろ結果が求められる立場である。その矜持(きょうじ)から出た言葉なのだろう。
そこには「年齢」という物差しは存在せず、あるのはプロアスリートとして結果を出せるかどうか。1週間前の川内の姿を思い出していた。
残り6試合で5ゴールという橋本が示した「覚悟」。36歳の激走に抱いた期待感を、今度は18歳に託してみたい。
「年齢はただの数字」なのだから。【佐藤隆志】







