J1昇格2年目でより存在感を強めるFC町田ゼルビアは、アカデミー強化にも力を入れている。
この夏休みは4つのアンダーカテゴリーが海外遠征を実施。韓国、中国に加え、昨年からアカデミーでのパートナーシップ提携を結ぶフランスの名門リヨンでも武者修行した。このたびアカデミーダイレクターを務める菅澤大我さん(51)がメディア対応し、下部組織の育成戦略について語った。
◆菅澤大我(すがさわ・たいが)1974年6月30日生まれ、東京都出身。96年に自身が選手として所属した読売クラブ(東京V)で指導者になり、育成担当で森本貴幸や小林祐希らの日本代表選手を指導した。名古屋、京都、千葉、熊本のアカデミーでも監督などを歴任。21年より現職に就任。
■21年から下部組織責任者
町田の勢いはトップチームだけにとどまらない。小学生のジュニア世代から始まる下部組織もこの夏に海外へと飛び出し、脳と体を目いっぱい刺激した。
小学生年代のU12が韓国へ10日間、中学生年代のU13は中国へ8日間、U14はリヨンへ13日間、高校年代のU18は韓国へ6日間の日程で渡った。クラブによると、4つのカテゴリーが同時に海外遠征を行うことは初めてだという。
そのキーマンとなっているのが、21年に町田に着任した菅澤さんだ。東京Vを皮切りに20年超の指導キャリアを持ち、数多くのプロ選手を育てたエキスパート。コロナ禍が収まったタイミングから海外へと本格的に目を向けるようになった。
「Jリーグの助成金を使ってタイに行ったことがスタート。昨年からはリヨンとパートナーシップの関係になり、いよいよアジア、ヨーロッパにトライできる状況になりました」
■サッカーの表現力に評価
U12の韓国遠征は3年前に招待されたのがきっかけで、今回で3回目。現地で見せた町田のサッカーが評価され、毎年呼ばれるようになった。大会結果でなく「サッカーの表現力の部分」が評価されてのことだという。その評価された“表現力”の部分についてはこう説明した。
「将来トップチームに選手を上げ、地元というか下から育った選手がヒーローとなっていくことを目標としています。トップチームが今素晴らしい成績を挙げる中で、一昨年、去年とはまたサッカーのやり方も違ってきている。より戦える、かつ戦術眼がある選手が必要とされている。そこへ逆算して我々も取り組んでいる。(同年代を見ると)海外では緻密さに欠けるというかフィジカルベースのサッカーをするチームが多い中で、我々はテクニックと戦術的なものを大事にしながらやっているのが彼らとの違いということで、その評価が高まっている」
■「うまい、賢い、タフ」
その育成コンセプトは「うまい、賢い、タフ」。この3つが指導のポイントとなっている。
「特にジュニアのところではタフでなくていいから、うまさと賢さを前面に出したサッカースタイル。その中で育成をしている。ユースになるに従って、タフさも大きく、強くしていきながら、より大人のサッカーに順応させていくのが考え方です」
体のサイズ感やスタイルの違うチームと戦うことで、多くの成果を手に帰ってきた。
「国内で普段の大会に出ているよりも、海外に行くとまったく異なるサッカーと対峙(たいじ)する。我々が目指すサッカーというか、育成方法というのがいい方向に小学生からユースまでつなげることができていると強く思います」
またサッカーの技術面だけでなく、人間性を磨く上でも海外遠征は大いに役に立つ。
「言語が違うし長距離移動があり、サッカーの仕方も違う国へ行く。大体1週間以上のキャンプになるので、選手の成長具合は、海外に行けば行くほど慣れてきます。ユースくらいになるとたくましくなってくるのが見受けられる」
■「聞く、伝える」の修得
今回のリヨンのようにアジアから遠く離れた欧州へ行けば、より脳が刺激され活性化する体験と出合える。それは未知なる感覚を得るというものだろう。そこには選手としての器を大きくする狙いもある。
「サッカーの面で言うと身体的に違う選手たちと戦うこと。日本選手も割りと大きくなってきているが、単純に手足の長さ、バネ、スピードはまったく日本とは異なるものがある。思わぬところで足が出てきたり、体を押されたり。そういう中で日本人らしく賢くプレーするためののツボが分かってきたし、どうやって自分を発揮するのかというのが学べている」
そしてもう1つは、菅澤さんならではの注文がある。日本人の殻を破る-。「聞く、伝える」というコミュニケーションの重要性だ。
「まだ達成できてはいないけど、日本人は人前で人の目を見てはっきりと言い切ることが苦手というか、パッと目を合わせられると目をそむけてしまったりする。わりかし自分の意見を言えず、後々になってヒソヒソ話で言うような大人にはなってほしくない。そういうところできっちり人の話を聞くということと、伝えるということができるように。そこはまだまだだなと思っています」
■育成年代は愛情と手間暇
代表クラスが集まり一足飛びで駆け上がっていくトップチームの世界とは異なり、育成年代は“お金”で何かが解決できるものはない。愛情と手間暇かけて育てていくのミソだろう。
「トップチームのスピードにアカデミーをどう合わせていくのかというところで言うと、最速ルートは全然おもしろくない言い方になりますけど、コツコツとやっていくしかない。我々が所属しているジュニアユース、ユースの大会カテゴリーを上げることを急いでしまうと、その時は一瞬強くなるんですけど継続的には難しいかなと思います」
千里の道も一歩から-。地道なことの積み重ねが、長い歳月を経て花を開かせることとなる。その思いが言葉の端々に込められていた。
【佐藤隆志】











