プレミアなど、欧州主要リーグが紆余(うよ)曲折を経てシーズンを終えた。セリエAが2試合、スペインの昇格プレーオフなど数試合を残すのみとなった。

日本代表選手の成績表も出た。DF吉田(サンプドリア)が安定したシーズンを送り、DF冨安(ボローニャ)、MF鎌田(アイントラハト・フランクフルト)が株を上げた。MF南野(リバプール)はプレミア優勝メンバーの一員となり、FW大迫(ブレーメン)はチーム残留に決定的な仕事をした。MF久保(マジョルカ)はチームは2部に降格したものの、リーグ再開後の数試合で貴重な経験をした。

MF中島翔哉(25=ポルト)が気になる。新型コロナウイルス感染拡大で、欧州各リーグが中断になり、再開されてから1試合も出場しないまま、シーズンを終えた。今季得点なしで、スタメン出場もままならなかった。今年は日本代表としても目立った活躍を見せることができなかった。

次世代エースとして期待され、森保ジャパンのトップ下三銃士(中島-南野-堂安)の中心で、W杯カタール大会へ期待を膨らませていた。昨年夏、背番号10を用意した欧州の名門ポルトに鳴り物入りで加入したが、今では放出がうわさされるほど、シーズン通して存在感を示せなかった。

最も気になるのが、リーグ再開後の10試合で出場記録がなかったことだ。新型コロナ禍から派生した家庭の事情もあったと聞く。チーム練習再開に合流せず、家族と過ごす時間が長く続いた。終盤になって練習は再開したが、監督ら仲間からの視線は冷たかった。

中島の選択はどうだったか。プロのサッカー選手として、ベストの選択だったか、と問われると疑問はある。しかし、夫として父として、彼が下した決断は、尊重すべきと、個人的には思う。一般人なら現実的に踏み切れないことを彼は果敢に選択した。安全が確保されているかが未知数な状況。極力リスクを避けること、多くのものをあきらめてまで、家族の安全を第一に考えることは、家の長として間違った選択ではなかったと思う。MLBには、今シーズンの出場を放棄した選手の話題も聞くし、それぞれの選択は尊重されるべきだと思う。

リスクは大きい。監督や仲間の信頼を失ったし、競技力、感覚も落ちたはず。日本代表にとっても痛手なのは間違いない。1歩ずつ成功の道を歩んでいたステップは、3歩以上後退したはず。これから彼が歩む道は、どうか。彼の選択をうらやましいと思う1人として、どう復活していくのか、注目していきたい。【盧載鎭】

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年来日、96年入社。サッカー担当23年目。ここ何カ月か、出掛ける際には消毒液持参とマスク必着を実践している。