鹿島アントラーズが、27日の大分トリニータ戦で「マルチアングル映像体験」を実施した。

スタジアム内の一部座席に専用端末を設置し、観客にはこれを操作しながら、4アングルからの映像を自由に楽しんでもらうもの。パートナー企業のドコモ協力の下、今春にスタジアムの5G化を実現したことから、こうした大容量通信が可能となった。端末にはLG社製の折りたたみ式2画面端末を使用し、上の画面では映像を、下の画面では文字情報を提供している。

観戦者は4つのアングル(俯瞰(ふかん)、鹿島の攻撃方向側ゴール裏、ボール保持者への寄り、中継映像)から、見たいアングルを随時選択。スタジアム内で4Gのスマホを開きDAZNを視聴すると、30秒~1分のタイムラグが生じるが、5G通信ではこの差が0・1秒に抑えられるという。つまり、目の前で行われている試合とほぼ同時に、別角度から試合を見ることができる。

下の画面では、選手のプロフィル、交代にも対応したリアルタイムフォーメーション、シュート数や走行距離といった細かいスタッツが見られる。試合のテキスト速報も提供されており、項目をタップすればすぐにリプレーも確認できるという。

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この「マルチアングル映像」は、ライト層とコア層のペアをターゲットにしているという。スタジアムで初めて観戦する人が“置いてけぼり”にならないよう、半受動的に必要な情報を受け取ることができるシステムになっている。一方でサッカー通にとっても、良い守備の場面や得点には結びつかなかったスルーパスやフリーランなど、独自の視点でサッカーを深掘りできる。企画を担当したNTTドコモの鈴木教之さんは、「自分だけのオーロラビジョン(大型スクリーン)として楽しんでほしい」と話す。

DAZNが中継映像の権利を保持しているため、現在はスタジアム外でマルチアングル映像を提供することはできない。しかし今後、自宅観戦にも対応できるよう展開していく可能性はあるという。権利面をクリアすれば、新型コロナウイルス流行下でもスタジアムでの観戦体験に負けない、新たな視聴スタイルが生まれるかもしれない。【杉山理紗】

鹿島-大分戦で実施された、マルチアングル映像体験の様子(C)KASHIMA ANTLERS
鹿島-大分戦で実施された、マルチアングル映像体験の様子(C)KASHIMA ANTLERS
専用端末の上画面では4アングルの映像が、下画面では文字情報が提供される。選手の顔写真下にはリアルタイムの走行距離が表示されている
専用端末の上画面では4アングルの映像が、下画面では文字情報が提供される。選手の顔写真下にはリアルタイムの走行距離が表示されている
専用端末の上画面では4アングルの映像が、下画面では文字情報が提供される。フォーメーションは選手交代もリアルタイムで反映
専用端末の上画面では4アングルの映像が、下画面では文字情報が提供される。フォーメーションは選手交代もリアルタイムで反映