全国高校サッカー選手権が終わり、1カ月が経過しようとしている。1回戦が行われた昨年末から、決勝戦までの約2週間。コロナ禍もあり、取材は対面ではなく、電話やZOOMなどオンラインの形となった。それでも、一生に一度の青春にかける選手たちの言葉、選手の成長を見守る監督の話には、深く考えさせられた。

優勝候補の呼び声高かった昌平(埼玉)。J内定者4人を擁し、テクニカルで、攻撃的なサッカーで、高校サッカーファンを魅了し続けたが、惜しくも2大会連続で準々決勝で敗れた。藤島崇之監督とは、全国大会前に電話で話す機会があった。約30分間だろうか。1つの話をよく覚えている。

「選手には積極的に取材を受けなさいと言っています」

理由は「大人と話すことで、言葉を編み出す頭を鍛えてほしいな、と」。続けた。「もちろん私やコーチのような大人と話す機会は普段からありますけど、知らない大人の方とそういう機会があることで、自分の言葉で話さないといけない、考えるいいチャンスになる」。確かに、昌平の選手1人、1人の言葉には重みがあった。昌平のサッカーは「自主性を尊重」するスタイル。「攻撃に関しては、選手たちに任せています」。ピッチ上でのアイデアは、普段のそうした会話力にあるのかな、と感じた。

藤島監督との話で、記憶がよみがえる。

時を戻そう。

15年前ぐらいだろうか。

当時高校生だった私も、サッカー少年だった。弱小高だったが、ある日、新聞記者に取材を受けたことがあった。日焼けサロンに通い、肌は真っ黒。両耳と、鼻にはピアス。そんな見た目の自分に対しても、記者は真剣に話を聞いてくれた。最初は嫌々だった。普段は反抗的な自分も「ちゃんと話さないといけないな」と思ったことを今でも覚えている。

当時の顧問の先生に「選手には積極的に取材を受けなさいと言っています」と言われていた訳ではない。そんな体験が基で現在、新聞記者になった因果関係は分からない。ただ高校生の時に「大人と話す」経験は、その先の人生において大事な要素になるような気がしてならない。

高校サッカーは、人間形成の場-。なんて言葉を聞く。選手、指導者の関係。それだけではなく、我々マスコミも、そういう立ち位置でつながっているのかもしれない。そう思い返す、冬の選手権だった。【栗田尚樹】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)