記者になり1年半がたつ。昨年に続き、J2アルビレックス新潟の担当をさせてもらっている。スポーツマンガが大好きで、昔から夢中になるのはスラムダンク。安西先生率いる湘北高校は、難敵だらけの神奈川県予選を勝ち抜き、インターハイ出場を果たす。2回戦では秋田県代表の山王工業高校と対戦。一時は20点以上の差をつけられるが、驚異の粘りで反撃し、最後は主人公・桜木花道がジャンプシュートを決め、逆転勝利を収める。何度も読み返すので展開は分かっているが、ページを開くたびに、興奮や感動が生まれる。

感動といえば、5日の大宮アルディージャ戦。DF早川史哉(27)の得点で先制するが、後半14分までに逆転を許す苦しい展開。相手の堅い守備の前にパスサッカーを封じられ、ジリジリとした時間が過ぎたが、MF本間至恩(20)のスーパープレーで同点とすると、最後はMF星雄次(28)がゴールを決め、逆転勝利を収めたのだ。自宅でリモート取材をしていた私は「これ山王戦?」と大興奮。試合途中で「今日は負けるかな…」と思ったことを、画面越しにこっそり謝った。

シーズンはまだ序盤戦だが「これ以上の感動がこの先、あるのか」と独り言。それもそう。昨季の最終戦、私はこの日と同じ試合会場で取材をしていた。その時のチームは過密日程よる疲労に加え、ケガ人が続出。ボロボロの状態で大宮に1-3で完敗し、11位フィニッシュとなった。あれから約半年、チームは見事にリベンジを果たした。アルベルト監督(53)は「苦悩に満ちた昨季の最終戦がこの場所だった。まだ苦しい思い出の1つだが、今日、フットボールは我々に幸せを取り戻してくれた」と振り返った。

安西先生は湘北高校を“戦える集団”に育て上げた。私は勝手に、就任2年目を迎えたスペイン人指揮官に、その姿を重ねてしまう。チームは開幕から12戦無敗(10勝2分け)で首位を走るが、長いシーズン、難敵との戦いが続き、理想的な展開に持ち込めないことも出てくるはず。それでも、固い絆で結ばれた監督と選手たちは「勝者のメンタリティー」を武器に今後も鳥肌級の試合を見せ、多くのファンに感動を与えてくれるはずだ。【小林忠】

◆小林忠(こばやし・ただし) 1985年(昭60)6月26日、新潟県阿賀野市(水原町)生まれ。水原サッカー少年団で競技を始め、北越高2年時に全国高校選手権出場。保育教諭として阿賀野市内のこども園に12年半勤務した後、19年途中に入社。20年からJ2新潟担当。