コロナ禍の逆境乗り越え、リーグ3連敗阻止なるかー。

J2降格圏に下位と僅差13位で、正念場に立たされているJ1アビスパ福岡の逆襲に期待したい。

中止延期のガンバ大阪戦を挟み2連敗中のチームにあって、8月20日は難敵の川崎フロンターレをホームに迎える。リーグ6位相手の試合に先立ち、オンラインに応じた長谷部茂利監督(51)は「(2年連続の)チャンピオンチームなので、自分たちがどこまで食い下がれるのか、選手たちとともに挑んでいきたい。好き放題やられないようにすることが大事」とし、今季当初からのチャレンジャー精神を強調した。

7月下旬からチーム内の新型コロナウイルス陽性者は累計で30人を数える異常事態が続き、8月6日のリーグG大阪戦は開催下限人数の13人がそろわず中止になった。

それでも、ルヴァン杯準々決勝においては、コロナ禍で人数が足りない中で、8月3日第1戦は4人(GK2人、DF1人、MF1人)同10日第2戦は3人(GK2人、MF1人)の控えのみで奮戦して、クラブ初の準決勝に進んだ。

チームの現状については、いまだ長谷部監督が「多くの選手が何日かベッドに横になる時間を過ごした。そう簡単に100パーセントには戻らない。復帰が早い選手、少し時間をかけないといけない選手、すでに時間がかかっている選手がいる」という状況だ。

それでも、救いはある。指揮官によると、コロナ療養明けで復帰してきた選手が「ルヴァン杯2試合を見て、テレビ観戦しかできなかったが、心打たれた」と話していたという。「自分はその一員であるということをかみしめ、自分も貢献したいというコメントが多かった。そういうのを聞くと、心ひとつになりつつあるというか、一体感の中にもっとコアなところで」といい、強い絆が生まれた。プラス材料だろう。

そんな中で、ルヴァン杯準々決勝2試合はベンチ外だった今季チーム最多6得点のFW山岸祐也(28)は「めちゃくちゃ休んで、何も考えずにリフレッシュした。こういうプレーができたらとか、イメージが持てた」と、自身と向き合い前を向いた。

とはいえ、正念場は続く。天皇杯8強、ルヴァン杯4強入りしている一方で、リーグ戦はJ2降格圏の16位ヴィッセル神戸とは、勝ち点差3の13位と苦しむ。

残り10試合。中止になったG大阪戦の代替日程は8月31日に決まった。過酷な連戦が待つ中で、堅守カウンターの精度をどこまで高められるかカギとなる。

特に、0-2で完敗した8月14日鹿島アントラーズ戦を踏まえ、長谷部監督が「最後の質は本当に良くなかった」と悔やんだJ1ワースト17得点の攻撃力改善は急務だ。

また、リーグ最少失点の堅守は誇るべきだが、川崎F戦も鹿島戦のように持ち味の前線プレスが効かず、逆にカウンターから守備の背後を果敢に狙われるようでは、かなりきつい。

しかも、福岡はリーグ開幕から12試合は計10得点だが、以降の12試合はさらに低い計7得点。開幕前、チーム目標に掲げた「(昨季42得点から)10パーセント得点アップ」は、達成できそうにない。相手から研究されていることもあり、課題の得点力が失速傾向なのが心配される。

こうなれば、ストロングの堅守で耐えまくり、ワンチャンスを確実に決める戦略が現実的だ。もはや現実的な目標となりつつある「残留」へは、メンタルや、コンディション面を万全にして、踏ん張るしかない。

山岸が「(川崎Fは)普通に強いチームなので、自分たちは100パーセント以上の力を出さないと勝てない相手」と話すように、まずは目の前の試合に「負けたら終わり」の背水の覚悟で死力を尽くすほかない。     【菊川光一】

◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市博多区生まれの54歳。福岡大大濠-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在報道部。主にJリーグ鳥栖、福岡やアマ野球などを担当。スポーツ歴は野球、陸上中長距離。170センチ、61キロ。血液型A。