来季ヴィッセル神戸入団が内定している筑波大MF山内翔(4年/神戸U-18)の大学サッカーでのプレーが幕を閉じた。

12月21日、茨城・流通経済大学龍ケ崎フィールドで行われた全日本大学サッカー選手権準決勝。明大に0-1で敗れた。主将山内は試合後の表彰式まで毅然(きぜん)とした態度を保っていたが、会場のバックスタンドで応援していた仲間の元へ近づくと、こみ上げてくるものがあった。

あいさつをすると号泣。ユニホームで顔を隠し、仲間に連れられながらベンチまで戻った。

「(今まで)あんまり試合終わってから感情を出すことはなかった。なるべく最後までやりきりたいなと思っていましたけど、応援の人のことや、あと1試合やりたかったなというのもあった。こういう素晴らしいチームに会えたことだったり、勝たせてあげたかったなというのと、自分の力不足だなと…いろんな感情がありました」

筑波大では1年時からコンスタントに試合に出場。3年春には早々と神戸入りを決めた。いち早くプロの道に進む選択肢もある中で、主将に就任し、筑波大のために全てをささげた。強烈なキャプテンシーでチームをまとめあげ、小井土正亮監督(45)に「山内翔のチームだった。彼がまとめあげてくれた」と言わしめるほどだった。今季は世代別代表の活動などでメンバーが抜けることも多かった。秋には、自身を含む主力3人がU-22日本代表メンバーとしてアジア大会に出場。1カ月近く不在の期間もありながら、リーグ戦を制した。そこから気持ちを切らすことなく43年ぶりにリーグ戦とインカレの2冠を狙い、あと1歩までチームをけん引した。

試合中の存在感も別格だった。落ち着いてボールを受け、さばき、時にはドリブルで前線まで運んだ。守備でも対人の強さを発揮し、的確な読みでインターセプトを繰り返した。チームは終始主導権を握り、相手をシュート1本に抑えたが、その1本を決められて夢が破れた。それでも「サッカーの本質の所、決めるか決めきれないかで明治大学さんが上回った。自分たちの全てと明治大学さんの全てがぶつかりあって、本当に力負け」と潔かった。

「好青年」を絵に描いたように、いつもハキハキと取材に応じる。今回も1度涙が引いてから取材が始まったが、主将の重圧について問われると、思わず目を潤ませた。時節声を詰まらせながらこう言った。

「自分1人でここまで来られたわけではないので、仲間に本当に感謝したいなと思います。今日試合に出られなかった4年生とか選手にちょっと申し訳ないというのはありましたけど、みんながいてくれたからこそ、ここまで来られたし、自分が特別なことをしたっていうのはないです」

遠く関西のJクラブのアカデミーから北関東の国立大学に進学した。4年間で着実にレベルアップし、神戸に戻る。筑波大に来たことの意義を認識している。「ここに来なかったら今の自分はない。ここまで育ててくれた筑波大や、小井土さんには感謝してもしきれない。それを恩返しできるのは、もう次はプロの舞台でしかないですし、そこに向けてやりたいです」

続けて「4年前の選択肢は間違いではなかったと言い切れますか?」と問われると、ニヤッと笑い「それはまあ来年、プロの世界で自分がどうなるかっていうところで答えが出ると思います」。そして「ここに来られたこと、このチームに出会えたことは、ほんとに良かったなと思います」と晴れやかな表情で言い切った。

仲間とともにかけぬけた濃密な大学サッカー生活が終わった。数多くの経験を胸に、山内がプロの舞台でスタートを切る。【佐藤成】