練習開始の6時間ほど前、日本代表が到着した空港の出国フロアにつながるドア付近では、銃を肩にかけた軍の男性が警戒していた。このフロアへの一般客の車でのアクセスは前日8日から禁止され、バリケードで通行が遮断された。日本代表はスムーズに移動したが、テヘランの玄関口は物々しい雰囲気。中心部へとつながる高速道路では身分確認のため、外国人が乗るタクシーを停車させている光景も。惨劇の現場には黒い旗がたなびいていた。

 日本から約17時間かけてたどり着いたテヘランは酷暑だった。真っ先に出国審査を終えた本田はいつものサングラスをしていなかったが、屋外に出ると選手全員にサングラスが必要なほど日差しが強い。イラク戦の開始は午後4時55分。市民は「夕方でも35度を超える」と言い、この日の練習で使用したスタジアムの気温は37度近かった。ハリルジャパンで3度目の遠征だが、過去2度は9月と10月でここまで暑くはなかった。標高約1200メートルの高地で空気が乾燥している。日本のような、まとわりつく不快感はないが、少し動くと喉が渇く。ほこりっぽいからなおさらだ。

 8日には同じB組のオーストラリアがサウジアラビアに競り勝ち、三つどもえの状況は変わらず、首位の日本には必勝が求められる。中立地とはいえ、地の利は隣国のイラクにある。猛烈な暑さや治安の不安とも闘いながら、ハリルジャパンは真の力を試される。