3大会連続のW杯(ワールドカップ)出場を目指すFW本田圭佑(31=パチューカ)が、不完全燃焼に終わった。日本(FIFAランク55位)はウクライナ(同35位)に1-2で敗戦。本田は右FWで約半年ぶりに先発し、シュート0本。攻撃より守備に追われる時間が多く、後半19分で交代した。W杯代表メンバー発表前最後の海外遠征でアピールに失敗し、苦しい立場に追い込まれた。当落線上のまま5月31日予定の発表日を迎えそうだ。

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 会場に降り注いだ冷たい雨はそのまま、本田の前途を物語っているかのようだった。昨年9月5日W杯アジア最終予選サウジアラビア戦以来、約半年ぶりに先発。わずか20分間の出番しかなかった23日のマリ戦から出場時間は3倍に増えた。だが、シュートを1度も放てないまま後半19分に退いた。自身で不完全燃焼を潔く受け入れた。

 「悔しいけど内容で上回られた。向こうが後半(体力が)落ちてくるサッカーをしていたので正直、もうちょっとやりたかった。だけど、もっと見ていたいと監督に思わせられなかった自分に非がある」

 自らの立場を理解し、試合に懸ける思いを表した。半袖姿のまま列の最後でピッチに入場すると、開始51秒でいきなり守備で体を張った。ペナルティーエリア内に進入した相手FWをとらえて前線から最終ラインにまで戻り、スライディングでブロック。しかし、攻撃では前半20分に右サイドからドリブルで持ち込むも相手DFにあっさりカットされた。際立つ働きはほとんど見られなかった。

 ハリルホジッチ監督は試合後、本田の評価について言及しなかった。だが「前に向かう姿が必要だが、引いて(パスを)もらう場面が多かった。少し多すぎた。変えていかないと、本戦でうまくいかない」と語り、後方で展開を落ち着かせようとプレーした本田を指したとも受け取れた。

 相手DFの背後を多く狙う戦術も、ポゼッション(ボール保持率)に重きを置く本田の考えとは差があった。「自分たちで(ボールを)支配することが大事。だが、やりたいことは今のこのチームと明らかに違う」。差が埋まりきらず、結果的に自身も最後までうまく攻撃に参加しきれなかった。本田にとってW杯で勝つために臨んだ一戦。だが、アピールは失敗に終わった。

 厳格なハリルホジッチ監督から、今回のメンバー発表会見では「このチャンスをつかんでほしい」と言われていた。だが、フル出場した昨年6月のイラク戦以来、9カ月ぶりの60分間以上の出場で見せられたものは-。依然、苦しい立場を変えることはできなかった。【小杉舞】