約2カ月後のサッカーW杯(ワールドカップ)ロシア大会の指揮を任された、日本代表の西野朗(あきら)新監督(63)が、選手に100%の力を発揮させて選手ファーストで戦う。12日、東京・JFAハウスで就任会見。電撃解任された前任者のバヒド・ハリルホジッチ氏(65)は選手に厳しく接し、プレーや戦術面で徹底して管理して失敗したが、それを反面教師としノビノビとプレーさせる。力以上のものを発揮させる“アキラは選手100%”の姿勢で1次リーグ突破を狙う。

 西野新監督は監督なのに、前任者のハリルホジッチ氏のことを何度も「監督」「監督」と呼んだ。まるで、今もその座にいるかのような口ぶりが、電撃交代であることを感じさせた。ただ、会見場のライトを浴びていたのは63歳とは思えないダンディー指揮官。スリムな体形は40年間変わっていないという。ダンディー西野ジャパンの顔は、ひと目で主役と分かる独特のオーラを放っていた。

 終始表情は硬かったが、質疑応答では「チャレンジしていく中で」「経験させたい中で」と「○○の中で」という独特の西野語を連発。前任者の30分で質問2つということもあった、しゃべりっぱなし会見とは違い50分で約15の質問に答えた。政権交代を印象付けるに十分の就任会見。そこで強調したのは徹底した選手ファーストだった。

 「選手たちがもっと自分のプレー、パフォーマンスを素直に出せるように。自クラブでプレーしている以上のものが出るはず。ストレートにプレーできる状況を作っていきたい」

 ハリル体制下では縦に速く、裏に抜けろ、デュエルだと、かなり限定したプレーを強く強く選手に要求した。技術委員長として2年間、それを最も近くで見ていた。日本人の特性との「ギャップ」もあり、選手が能力を発揮し切れていないのではと感じたようだ。

 これが田嶋会長が言うコミュニケーション不足での解任につながった。反面教師とし“アキラは選手100%”でいく。「自分が選ぶメンバーですから、信頼をして、そういう選手たちに対して個人のプレーに制限はかけたくない」。それどころか「チームの方向性、ベクトルが合っている中で逸脱する選手はたくさんいますし、1つの目標に向かっている中でのことなら、まったく問題ない」とオレ流も歓迎。「最高の化学反応が起こる」というチーム編成でプラスアルファの力を引き出す。

 W杯の目標もベスト8だ16だと具体的には設定せず「予選(1次リーグ)は突破したい」。これも選手にプレッシャーを与えたくないから。徹底して選手思い。これがダンディー西野流。高圧的で厳しすぎるハリル流とは別の道でW杯に行く。まず明日14日のC大阪-東京戦(ヤンマー)の視察が初仕事になる。【八反誠】