日本人初の兼任監督、森保一監督(50)がコスタリカ戦で初めてA代表の指揮を執り、4年後のW杯カタール大会への第1歩を踏み出した。

元日本代表、ドーハの悲劇も経験し、Jリーグ監督として広島を率い3度の優勝を誇る日本人監督の“デビュー戦”。日本協会が契約するダンヒルのスーツをビシッと着こなし、落ち着いた表情でベンチに入り、開始のホイッスルを聞いた。

本来は7日のチリ戦(札幌ドーム)で船出するはずだったが、北海道での大きな地震により試合が中止。4日遅れの晴れ舞台を、被災地に寄り添いながら迎えた。

前日10日の会見では「台風21号、地震で犠牲になられた大阪、北海道の方々のご冥福をお祈りします。暮らしが1日も早く元に戻ることをお祈りします」と真っ先に話していた。

気づかいと、思いやりの人。それはA代表の監督になっても変わらない。今回の活動でも初日にいきなり謝った。メンバー発表で、W杯ロシア大会のレギュラー0人の若手中心の招集メンバーを「コア(核)の選手ではない」と1度は発言。これが引っかかっていたようで「私の言葉足らず。ここからコアに残ってほしい、という意味でした。すみません」と訂正。律義なところを印象付けた。

一方で、たくましさも。日本人初の兼任監督。A代表と五輪代表の監督兼任は、00年シドニー五輪と02年W杯日韓大会で結果を残したトルシエ氏以来となる。分かっていたこととはいえ、いきなり激務、ハードスケジュールを強いられた。

今回のA代表の活動期間は9日間だが、指揮官は直前まで、東京五輪世代のU-21(21歳以下)日本代表を率い、アジア大会(インドネシア)を決勝まで戦っていた。このアジア大会に向け集合し出国したのが8月12日だったから、森保兼任監督の活動期間は2つの代表の“連続勤務”で、ちょうど1カ月。W杯やアジア杯などに匹敵する長さになった。

1カ月休みなしで、日本サッカーの最前線、トップカテゴリーとその下の大事な東京五輪世代の強化にあたった。

迎えた注目の初戦。思い切って東京五輪のエース候補、オランダで活躍するMF堂安や、秘蔵っ子の広島DF佐々木を先発に抜てきした。先発の11人の、これまでの国際Aマッチ出場が計78試合という、Jリーグ創設後の代表監督の初陣としては史上最少のフレッシュ布陣を、ピッチに、信頼と期待とともに送り出した。