【ベロオリゾンテ(ブラジル)24日(日本時間25日)=岡崎悠利】サッカー南米選手権の1次リーグC組第3戦が行われ、日本代表はエクアドルと1-1で引き分け、2分け1敗の勝ち点2で同組3位となり、8強入りを逃した。

注目の18歳、MF久保建英(レアル・マドリード)はトップ下に入りフル出場。後半ロスタイムにはゴールネットを揺らしたが、オフサイドの判定で勝ち越せなかった。それでも次々と得点機を演出し、本気の南米勢相手にも十分通用する力を証明した。

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分かっていても、望みを捨てきれなかった。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)での判定中、久保が両手を合わせた。フーッとほおをふくらませて深呼吸し、天を仰ぎ祈った。

1-1の後半ロスタイム4分。MF中島のシュートが相手選手に当たり、こぼれ球が足元に転がった。夢中で右足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。勝利が突破条件の日本を救う1発かと思われたが、すかさず副審の旗が上げる。オフサイド。主審は確認のためVAR判定へ。「オフサイドだとは思っていた」「けど、DFのクリアミスにならないかなと思ってもいた」。判定は覆らず、幻のゴールとなった。

大善戦した前節ウルグアイ戦から、1人だけ変更されてスタメン入り。指揮官の厚い信頼に応えたかった。トップ下に入ると「ファーストチョイス」と表現する得意のドリブルでの仕掛けを減らした。FW上田、前田ら前線へ次々とスルーパスを打ち込み、数多くのチャンスを演出した。「やれるところは見せられた。前を向いてからのドリブルや、テンポの速いパスはやれた」。得点したMF中島以上の存在感を見せつけた。それだけに「最後は痛み分けになってしまって悔しい」と話した。

6月のキリンチャレンジ杯でA代表に初招集されてから、約1カ月に及ぶ活動を終えた。「国を背負う誇りやうれしさを感じた」と、率直な感想も口にした。デビュー戦からここまでを終え、東京オリンピック(五輪)の星としての期待すらも超えてA代表への定着も不自然なものではなくなった。「また、この舞台に立てれば」。敗戦の悔しさの中で、静かに力強い言葉を残した。

大会中に日本人として初めてスペインの名門、Rマドリードへの加入が決まった。世界中の注目が集まる中、チリ戦とあわせて2試合にフル出場。重圧をはね返すように躍動感あるプレーを披露した。移籍については「日本に帰るまでが代表なので」と言及を避けた。

帰国後は、29日に在籍した東京での退団セレモニーが検討されており、7月上旬にはRマドリードに合流予定。かつて誰も経験したことのない挑戦が待っている。「これでサッカーが終わりではない。次に向けてやっていきたい」。無限の可能性を秘める18歳が、日本サッカー界をまだ見ぬ地平へと連れて行く。【岡崎悠利】