東京五輪世代が中心の日本代表にあって“オーバーエージ”のMF中島翔哉(24=アルドハイル)が、チームを勇気づける1発を決めた。前半15分、FW岡崎へスルーパスを送る。飛び出したGKにクリアされたが、そのボールにいち早く反応。無人となったゴールに右足で蹴りこんだ。1度は岡崎のオフサイドと判定されたものの、VARによってゴールが認められた。「うまく入ってよかった」と短い言葉で振り返った。

前半40分には久保の絶妙な縦パスから抜け出し、GKが一瞬前に出たのを見て放ったループシュート。わずかにゴールの上へと外れた。「選択に後悔はないが、技術が足りなかった」。後半ロスタイム4分には、ゴール至近距離からフリーでシュートを放ったが、相手選手のスライディングに阻まれた。1点こそ決めたが、追加点を奪えなかった悔しさが上回った。

思い入れの強い場所で再び決めたゴールだった。中学時代はブラジルの名選手ロナウジーニョに憧れ、中1から中3にかけて4度もブラジルへサッカー留学を経験。中3の最後には、サンパウロから母親に「帰国したくない」と泣きながら国際電話をかけ「日本の高校に行かず、このままブラジルに住んでプロになる」と頼んだ。留学期間を延長してもらうほど王国でのサッカー生活にひきこまれ、日本ではポルトガル語の塾に通った。そして16年リオデジャネイロ五輪のコロンビア戦に続き、今大会もクロスバーに当てながらの1発。日頃から口にする「楽しさ」を教わった国で着実に成長した姿を見せた。

A代表ではMF南野、堂安との「三銃士」が確立されているが、今大会は久保と三好に加え、安部も台頭。2列目のポジション争いが激化することは間違いなく、10番を背負う中島と言えども安泰ではない。ゴールを決めてなお「2点、3点と取れなくて残念だし、悔しい」と、さらなる決定力向上を誓った。

決勝トーナメントに進めばブラジルとの対戦が待っていたが、夢はかなわなかった。2分け1敗と未勝利に終わった南米での苦い記憶を、成長の糧にする。【岡崎悠利】