サッカー女子日本(なでしこジャパン=FIFAランク10位)が、決勝トーナメントの扉を開いた。チリ(同37位)に1-0で勝利。後半32分、途中出場のFW田中美南(27=INAC神戸)が、FW岩渕のアシストから決勝弾。カナダとの初戦でPKを外した田中が、名誉挽回の一撃で銀メダルを獲得した12年ロンドン大会以来の白星を引き寄せた。E組3位に滑り込み、30日の準々決勝でスウェーデンと対戦する。

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チームに救われた田中が、今度は日本を救った。後半32分、岩渕のポストプレーから、スペースに流れたボールに反応し右足で決めた。途中出場でシュート5本。積極性が決勝点につながった。カナダとの初戦でPKを外しながら岩渕の起死回生弾で引き分け、敗戦は免れた。その雪辱とばかりに、この日は自らのゴールで8強をたぐり寄せた。今大会初の有観客。客席には家族が駆けつけていた。

「初戦はPKを外しちゃったけど、みんなのおかげで取り返すことができたので感謝したい。GKが(前に)出ると思ったので、浮かせました」

分岐点は2年前だった。3年連続リーグ得点王ながら19年女子W杯は落選。日テレ東京Vに在籍していた同年秋、INAC神戸からオファーが届いた。初めは「99・9%ないです」と首を横に振ったが、W杯落選が引っかかっていた。

交渉相手だった神戸の安本卓史社長(48)に「悔しいです」と漏らした。20年夏に予定されていた東京五輪まで、1年を切っていた。「一緒に『違った環境でもできるんだ』と証明してみないか?」。1つ1つの言葉に心が揺れた。日テレの下部組織時代から仲がよかった当時神戸所属の岩渕とも話し、腹をくくった。岩渕が安本社長へ電話し、その流れで移籍の意思を伝え、新たな道に進んだ。

田中の決勝弾をアシストした岩渕は感極まって涙した。「今まで感じたことがないプレッシャーはあった。ここで終わるわけにもいかなかった」。8強の先へ-。あうんの呼吸を誇る名コンビが、日本をさらなる高みへ導く。【山田愛斗】

▽高倉監督 前半からいい形を作れていたが、なかなかゴールを割れなかった。焦れずに貫き通して、我慢しながらの勝ち点3になった。