11月開幕のサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会に7大会連続7度目の出場を決めた日本代表がトンでもない!? 問題に直面するかもしれない。大会期間中、疲労回復に効果があるとされる豚肉を食べられない可能性が浮上。イスラム圏のカタールでは宗教上、豚肉を食べる習慣がなく、持ち込みも禁じられている。日本協会は大会組織委員会とカタール協会に問い合わせているが、20日の時点でまだ返答がないという。アスリートにとっては重要な回復食である豚肉。もし、NGとなれば、思わぬところで対応を迫られることになる。

   ◇   ◇   ◇

W杯カタール大会の1次リーグでドイツやスペインと対戦する日本が、エネルギーの源となる食事の問題に頭を悩ませることになるかもしれない。中東カタールで豚肉はNG。イスラム教では「不浄の動物」とされ、食べることはタブー。カタールには持ち込みも禁止されており、お目にかかる機会もほぼないという。

アスリートにとって豚肉は疲労回復にもってこいの食材。他の肉類に比べて5~10倍多く含まれるというビタミンB1が、その源とされる。また豚肉に含まれるビタミンB1は熱に強く、体内で吸収されやすいという。この長所も含め、日本でも食卓の主役の1つ。大人気食材といえる。

宗教上の理由となれば、ハードルは高い。アジア王者となったザックジャパンの11年アジア杯がカタールで開催された時も、豚肉の持ち込みは禁止された。鶏肉が使われたソーセージを食べたという。隣国のUAEもイスラム圏で、森保ジャパン初の国際大会だった同国での19年1月アジア杯でも、豚肉の持ち込みができなかった。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)などの試合がカタールで開催されJリーグ勢が戦った際も、同様に豚肉NGだったという。

もちろんルールは理解している。ただ、厳しい制限があることは承知で、日本代表も本気だ。W杯本大会の期間中はホテルの複数フロアを貸し切りにする予定。さらに調理場も、専用のものを利用するプランだ。ホテルのキッチンを使わず、日本のチーム関係者しか関わらないように調理する。そうすることで、カタールの文化、戒律を尊重し理解しつつ、豚肉を摂取できないかと、可能性を探っている。

しかし、これだけの準備とともに打診したが、今のところ手応えはない。大会組織委とカタール協会にコンタクトをとってから、もう1カ月以上、トンと返答がないという。

動物を使わない、いわゆる“代替肉”が注目されるようになり、ミシュラン3つ星のレストランでも提供される時代。それでも豚肉は長く日本人の体づくりに大きく関わってきた。大きな負荷がかかるW杯を戦い抜くには、慣れ親しんだ食事は重要になる。初の中東開催のW杯。だからこその“問題”は解決されるのか-。返事待ちとなっている。

 

◆日本代表の食事 W杯や、その予選など重要な海外遠征にはA代表の専属シェフ、西芳照氏が同行。世界中のどこでもほぼ完璧な日本食で選手を支えている。ジーコジャパンから遠征に同行。選手の胃袋をガッチリつかみ絶大な信頼を寄せられている。選手の1番人気メニューはカレーライス。なお、国内での試合や活動時は、管理栄養士の指導のもと3食ともビュッフェ形式で用意される。揚げものや刺し身、すしなどの生ものは基本的に出さない。毎食、タンパク質摂取のため肉(牛、豚、鶏)と魚も各種準備する。加えて、補食として練習と試合の前後には干しイモやようかん、チーズやナッツ類、バナナも用意されている。

◆アスリートと豚肉 運動量が増えると、体内で破壊された分のタンパク質が必要になる。豚肉は疲労回復に役立つビタミンB1が豊富で、意識的にとりたい食品とされる。農林水産省公式サイトによると、豚肉(黒豚)の肩ロース脂身つき、牛肉(黒毛和種)のサーロイン脂身つきの生肉100グラムの比較で、ビタミンB1は、牛0・05ミリグラムに対し、豚0・7ミリグラムと大きな差がある。