7年ぶり2度目出場の藤枝明誠(静岡)が、1回戦で涙をのんだ。東海大仰星(大阪)に1-2。1点を追う後半8分、DF中道慶人(3年)の直接FKで同点にしたが、直後に勝ち越し点を献上した。県勢の初戦敗退は昨年度の藤枝東から2年連続、ここ5年では4度目。サッカー王国の苦境は続く。

 「王国復活」を掲げた藤枝明誠の戦いも、初戦で終わった。敗戦を告げるホイッスルが鳴り響くと、エースFW藤本一輝(3年)は天を仰いだ。MF丹羽一陽(3年)は立ち上がれず、DF中道に肩を抱かれた。

 1点を追う後半、松本安司監督(47)はDF西谷知也(3年)に代えてMF上戸雅也(2年)を投入。さらに、6人のポジションを変えて流れをつかんだ。同8分、ゴール右で獲得したFKを中道が左足で直接決めて同点。直後の同9分に勝ち越しを許すも、同27分には藤本がドリブル突破からPKを獲得した。同40分には、FW遠野大弥(3年)がバー直撃のヘディングシュートを放った。終盤には相手選手が1発退場。それでもゴールネットは揺れず、バス23台で駆けつけた応援団もため息を重ねた。

 中道は「後半はショートパスが増えて、攻撃的なサッカーができた。前半からできていれば…」と悔やんだ。松本監督も「前半40分間を無駄にしてしまった」と言った。言葉通り、前半は前線から圧力をかける相手に後手に回り、放ったシュートは1本。築き上げた「超攻撃サッカー」を発揮する時間帯が遅すぎた。

 これで、県勢はここ5年で4度目の初戦敗退。松本監督は「県を勝ち抜いたことは素晴らしいし、選手はよくやった。でも、静岡代表が勝てないのが現状。(ゴールを)仕留める部分が弱い。勝ちきれないのは、そこなのかなと思う」と分析した。かつては出場校が優勝を重ね、「王国」と呼ばれてきた静岡の低迷-。長いトンネルの出口は、今回も見えなかった。【前田和哉】