頼れる元主将が帰ってきた。聖和学園(宮城)が海星(三重)に2-0で勝利した。持ち味のドリブルサッカーを研究されて前半からリズムをつかめない。後半13分に背番号10のFW西堀駿太(3年)が途中出場すると、縦への突破を武器に決定的な場面を演出。後半35分にMF藤井僚哉(3年)の先制弾に貢献し、後半38分には自らダメ押しの追加点を決めた。

 その一撃を待ちわびていた。1-0で迎えた後半38分。FW西堀は中央へ走り込んでいた。目の前を阻む相手守備はいない。右サイドをぶち抜いたMF藤井からグラウンダーのパスが足元に来ると、あとは右足を振りぬくだけ。ゴールネットへと突き刺した。「相手が疲れている中での点でしたし、自分の得点なんですけど、チームの得点です」と控えめに笑った。

 苦労したからこそ、勝利の女神がほほえんだ。背番号10。エースナンバーを与えられた男は、キャプテンマークを失っていた。6月中旬、東北大会の青森山田戦で左足首の靱帯(じんたい)を負傷した。復帰まで2カ月かかるケガ。「監督と3年生全員で話をしました。次のステップに行くなら(現主将のDF小倉)滉太が引っ張っていった方が強くなる。託そうと思った」と主将の座を降りた。

 自らを見つめなおした。将来を嘱望され、高校1年生から選手権のベンチに入った。だが出場機会はなく、今大会は負傷の影響でスタメンにも入れなかった。悔しさを胸にドリブルを磨いた。練習後は120メートルのグラウンドをドリブルで走り抜ける練習を10本。「県の決勝では何も出来なかった。疲れている中でもボールタッチを出せるように」と歯を食いしばってきた。

 努力は実を結んだ。後半13分。待ちわびた選手権初出場を果たすと、流れが変わった。「スタメンの2人はボールを持つが、自分は縦の突破が持ち味。相手がリズムに慣れているところを、縦のドリブルを狙った」と相手守備を華麗に突破。勝利を引き寄せた。

 目指すは昨年度に敗れた青森山田との対戦。順当に行けば2試合後に当たる。西堀は「リベンジしたい。先輩たちの思いも背負っていきたい」と意気込む。先輩のため、仲間のため、チームのため。苦労を重ねた元主将が勝利へ突き進む。【島根純】