初出場の鵬学園(石川)が全国1勝を挙げられなかった。佐賀東に4発浴び、完敗。初めての全国の舞台は甘くなかった。赤地信彦監督(31)は「一言、悔しい。前半はプラン通りだったが、まだまだということ」と目を赤くはらした。

 前半17分、MF越田瞬(3年)がドリブルでペナルティーエリア内に進入。相手のファウルを受けPKを獲得した。キッカーのMF千葉東泰共(ちばと・ひろと、3年)がゴール右に勢いよく蹴りこんだが、GKにはじかれてしまった。

 千葉東は「自分が決めていれば勝利に導けたかもしれない。少し甘いコースに飛んでしまった」とPK失敗を悔やんだ。

 石川大会では、12~15年度の4大会連続4強入りし、14年度の選手権王者・星稜を倒し、代表の座をつかんだ。石川大会で17連覇していた星稜の歴史よりも浅い創部15年目で、経験値は少ない。就任5年目の赤地監督は当初「3年生は5人だけ。1、2年生合わせて20人ほど。紅白戦もできず、私が入っていた」という。今大会もベンチ入りした3年生は10人中5人だけ。総力戦の雑草魂で「超スピード出世」を成し遂げた。

 赤地監督自身も、異色の経歴を持つ。大学を卒業後就職の道を選んだ。4年間、いつか指導者になることを夢見て会社勤めしていた。12年に「サッカーを通して成長できることがある」と、サラリーマンからサッカー部監督へ転身。就任当時は環境も厳しく、グラウンド整備から始まったが星稜を倒すまでのチームに成長させた。

 遠かった全国での白星。指揮官は「目指していた場所に立つのはうれしいが、ここで勝てなかったのは悔しい。石川県の代表として必ずリベンジしたい」。主将の千葉東も「後輩には『この悔しさをバネに全国制覇してくれ』と伝えた」。新たな歴史の扉が開かれることを信じて、10人の3年生は後輩にバトンを託した。【小杉舞】