J1磐田入りが内定している東福岡のMF藤川虎太朗(3年)が、志波芳則総監督(66)のゲキで目を覚ました。

 前半2分、中央から左サイドのMF青木駿(3年)に絶妙なパスを出し、FW藤井一輝(3年)の先制点の起点となった。同15分には積極的にシュートを打ちにいったが、決めきれなかった。その後は藤井から1列下の、シャドーのポジションから両サイドにパスを散らして起点となったものの、自ら決めに行く場面は少なかった。

 ハーフタイムに、志波総監督から「生ぬるい前半だった。恥じないプレーをやれよ!!」と、名指しでゲキを受けた。「名指しで言われたので、悔しかった」。短いハーフタイムの中、何が足りなかったかを考え(1)球際の部分で戦えておらず(2)中盤で回すだけで、前に抜け出さなければ怖くないと、頭と心の中を整理し直した。

 その上で、ピッチに立った後半は、相手が押し返してきたこともあり、チームは苦しい時間帯が続いた。その中、同36分に、右サイドからゴール前に走り込んできたMF浜田照平(3年)に、ピッチ中央やや左から横パスを出し、ゴールをアシストした。

 パスには、こだわりがある。スペインの名門バルセロナを中心に、欧州主要リーグの映像を繰り返しチェックして「こういう場面では、こういうアングルが空くんだ」と発見し、それを自分のプレーに落とし込んでいる。特に好きなのは、バルセロナのスペイン代表MFイニエスタだという。磐田入団後、プロで生きていくための生命線も、パスだと感じている。「自分は、そんなに目立つ選手ではない。しっかりパスを出して、受けてもらって…ということを繰り返す中で、チームの中心になっていきたい」。

 一方で、東福岡においては、点取り屋としても期待されている。昨年の全国高校総体では5ゴールで得点王になり、昨年の選手権も2ゴール決めたが、2連覇がかかった今大会は無得点。期待されているのも分かるし、自分でも点を取りたい。それでも「決めよう、決めようとシュートに貪欲になったらDFが(マークに)ついてくる。点を取るのも大事だけど、チームの勝利が大事だから」と、周りを使い、点を取るためにパスを出してきた。

 そんな葛藤の中、志波総監督のゲキを受けた。「自分の考えもあるが、一理あると思うんで、受け止めて自分の財産にすれば、と思い、後半は戦いました」。連覇達成に向け、より戦う姿勢を明確にしていくつもりだ。【村上幸将】