浦和FWオナイウ阿道(21)を兄に持つ、正智深谷の1年生MFオナイウ情滋(じょうじ)は、後半33分から途中出場し、高い身体能力で会場を沸かせた。

 同35分、右サイドに転々と転がったボールに猛然と突っ込んだ。そのまま、こぼれ球となったが、オナイウの快速にスタンドは湧いた。直後のスローイングが、相手ペナルティーエリアの中央まで届くロングスローとなると、スタンドからどよめきが起きた。

 それでも、試合を終えると悔恨の言葉が口を突いて出て、目から涙があふれた。

 「あの状況で、監督が3年生を使わず、来年の経験のために自分を使ってくれた。自分としては、あの状況を、どうしてもひっくり返したい気持ちで入ったけれど…あそこで追いついて、まだまだ3年生にサッカーをしてほしかった。自分のふがいなさが、すごい悔しくて…3年生が、もういなくなっちゃうと思うと涙が出た」

 準決勝、決勝が行われる埼玉スタジアムは、千葉から浦和に移籍した兄のホームとなる。兄からは、3日の3回戦・創造学園戦で初めてベンチ入りした際「頑張れよ」と激励のメールがきたという。オナイウは「今まで3年生が残してきてくれたものを、自分たちがしっかり吸収して、来年また選手権に出て、今度こそ埼玉スタジアムに戻って、優勝できるように頑張りたい」と誓った。【村上幸将】