松本山雅FCの反町康治監督(54)は、退場で1人少ない中、大宮アルディージャに逆転勝ちした試合後の会見で「0-1で1人少なくて、ハーフタイムで折り返した。S級の試験に出たら、今日は合格だったと思う」と、Jリーグの監督を務めるのに必要な、最高位の指導者資格S級ライセンスに例えて勝利の大きさを強調した。

 一進一退の展開の中、前半35分にMF中美慶哉(26)が、競り合って倒れた大宮MFマテウス(23))が股で挟んだボールを取ろうと2、3度と右足でボールを蹴り、その流れで、すねが股間付近をかすめると、マテウスは股間を押さえてもん絶。一連の行為が乱暴行為と取られ、中美は一発退場した。そして同ロスタイム3分に先制を許した。前半は1-3とシュート数はほぼ同数だったが、1人少ない後半は2-9のシュート数が物語るように大宮に押し込まれた。反町監督は「ゲームの方は見ての通り、苦しむ展開でチャンスらしいチャンス、後半は2、3回しかないと思って話はした。それが、うまくゴールを取ることが出来て、ひっくり返すことが出来た」と胸を張った。

 「S級の試験に出たら、今日は合格」と語った後半の采配について、反町監督は「辛抱強くやりながら点を取らないといけない。持っている駒から言うとスペースに出て行く力がある石原と、少し守備は目をつぶってサイドで仕掛けることが出来る下川しかいない。他の選択肢はあまりなかった」と、先発のMF石原崇兆と後半開始にFW前田大然に代えて投入したDF下川陽太にかけたと語った。

 その石原が後半10分、右CKからのこぼれ球に反応し、ペナルティーエリア内で大宮MF大山啓輔(23)に倒されてPKを獲得。そのPKを同11分にFW永井龍(27)が落ち着いて右足でゴール右隅に決めた。

 反町監督は永井について「サイドで時間を作ることが出来れば、うちが5対向こう4の形は1人少なくても変わらない。そのままその形を続けて勝負する。そこしかポイントがない。永井も3回に1回はボールをコントロールして時間を作れる」と語った。

 また大宮が5戦連続ゴール中のFW大前元紀を諦め、後半25分からFWマルセロ・トスカーノをピッチに送り出したことについては「ありがたかった。大前が代わったことによって、最後、FKのスペシャリストがいなくなった。大前が残っていたら、また逆転されていた」と振り返った。

 中美の退場については「本来は(フィールドプレーヤー)10対10でやりたいことをやりたかったですよ。まぁ、うちは今年、レッドが多くて。球際とか、いろいろなところでやっている証拠なのかもしれないけれど、アウェーで連戦で1人、退場はないだろうと思いながらも、裏返すことが出来た。今度、10人でスタートしたい」とジョークを飛ばした。そして「ルール違反? そんなことないでしょ」と笑った。

 反町監督は「最後に喜んでいる姿を見たら、私もうれしくなったし、選手もやりがいがあると思う。最後まで死にものぐるいでやるのが我々のチームなので、ぞの片りんは見せられたかなと」とサポーターに感謝しつつ、松本らしい戦いが出来たことに胸を張った。【村上幸将】