第98回全国高校サッカー選手権に出場する近畿勢の話題や注目選手を紹介します。4回目は兵庫代表・神戸弘陵(4大会ぶり10度目)のDF田平起也(たびら・たつや=3年)。来春のJリーグ、セレッソ大阪入りが内定した18歳が、スケールの大きなプレーを披露します。

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もしかすると1、2年先に日本代表に抜てきされているかもしれない大型選手だ。神戸弘陵のDF田平は「注目度が高い高校選手権でひと花咲かすこと。C大阪でレギュラーを奪い、将来は日本代表に定着したい」と言い切る。188センチの大型センターバックで貴重な左利き。今や世界的にも欠かせない、攻撃の起点となる縦パスやロングフィードも武器にする。

「今頑張っていれば未来はどうなるか分からない。努力の積み重ねが必然を生む」。18歳とは思えない、説得力を持つ言葉を口にする。記者が「田平選手、学校の成績も優秀でしょう?」と問うと、「いや、悪い方ですよ」という返事。その流れから趣味を聞くと、読書だという。現在は「20代に伝えたい50のこと」というビジネス書を愛読中。ジャンルを問わず、例えば自伝や人生本まで読破している。好きなフレーズがあれば蛍光ペンで本に印をつけたり、携帯電話に残しておく。ピッチだけに視線を向ける選手ではない。

さらに記者は「田平っていう名字は珍しいですね」と問うと「父親の故郷長崎で多いらしいですよ」。どこまでも会話が途切れない。

2年時はA(1軍)とB(2軍)チームを行ったり来たり。それでも地道な基礎練習で技術を高めた。3年になった今年5月、日本協会関係者が視察したプリンスリーグ興国(大阪)戦で活躍。6月のU-18日本代表ポルトガル遠征で人生初の日の丸をつけ、試合に出た。夏にはC大阪の練習に参加して入団内定を勝ち取った。ジュニアユースまで在籍していた古巣C大阪から、再び認められた。

9月には高校に所属したままJリーグに出場できる特別指定選手としてC大阪で活動した。J3に参戦するC大阪U-23の一員でベンチ入りも果たした。確実に階段を上ってきた。

C大阪ジュニアユース時代、長居スタジアム(現ヤンマー)にほぼ全試合通い、視線の先は山下達也、藤本康太らのいる最終ラインだった。CD化もされた選手入場曲「C大阪アンセム」を聴けば、心がしびれた。「このピッチに立ちたいと思った」。数年前の夢を今、現実にした。

2022年W杯カタール大会での日本代表を少しは意識はしながら、その次の2026年W杯カナダ・メキシコ・米国共催大会への出場を本命視している。

現在の夢はもちろん、過去ベスト8が最高の全国選手権で神戸弘陵を悲願の日本一に導くことだ。大会直前にはU-18日本代表候補の福島合宿に参加するなど多忙だが、秋田商との1回戦からトップギアで立ち向かう。

◆田平起也(たびら・たつや)2001年(平13)5月10日、大阪・八尾市生まれ。長池つばさFCを経てC大阪ジュニアユースではMF、神戸弘陵でDFに。魂の守備をする元日本代表DF松田直樹(故人)を動画で見て尊敬する。家族は両親と姉。188センチ、80キロ。