ヴィッセル神戸三浦淳寛監督(46)の采配が光った大逆転勝利だった。

前半を0-2で折り返し、ハーフタイムで手を打ったのが1人目の選手交代。先発したFW藤本憲明(31)に代え、途中投入したMF中坂勇哉(23)が4得点中、3点に絡む大活躍をした。

中坂はJ2京都サンガから復帰した昨年はわずか2試合、今季はこの日が初のベンチ入りで初出場。神戸ユース出身で18年にはスペイン3部クラブへ5カ月間、移籍した経験もあるが、主力には定着できていなかった。

この日がJ1通算でも30試合目(3得点)。0-3で迎えた後半8分、MF山口蛍(30)のゴールを左からマイナスのパスで演出。1-3で迎えた後半12分、バックパスする相手にプレスをかけていたのが中坂だ。結果的にFW古橋亨梧(26)がゴールしたが、お膳立ては背番号31だった。

さらに3-3で迎えた後半41分、決勝点を奪った山口にアシストしたMF佐々木大樹(21)へパスを出したのが中坂だ。基本的に2列目でプレーし、スペースを埋める動き、効果的なパスなどは秀逸だった。

三浦監督は「後半になって途中で入った選手たちが役割を果たしてくれ、よく逆転してくれた」と感想を述べた記者会見。その最後に「1年を通して(沖縄キャンプの)スタートから中坂はめちゃくちゃ調子がよかった。どこかのタイミングで使いたかった。今日は彼が入って確実に流れ変わった」と、これまでの会見でも話したことがないような120%の絶賛ぶりだ。

奇跡的な3点差大逆転勝利を陰で支えたのはプロ6年目、171センチ、68キロの中坂だった。

実際に2ゴールの山口も「後半、早く失点して(0-3となり)最悪の展開だったが、チームの底力を見せつけることできたし、交代で入った選手が結果を出してくれた」と話す。

この試合はDFトーマス・フェルマーレン(35)やFWドウグラス(33)ら主力4人をベンチから外していた。そのチャンスをつかんだのが中坂であり、今季2度目の先発で中坂同様に3点に絡んだ佐々木。控え層の調子を見極めた三浦監督の眼力で、神戸は3勝2分け1敗で暫定5位に浮上した。【横田和幸】