浦和の元日本代表MF阿部勇樹(40)が、現役を引退する意向を固めていることが12日、分かった。2年ぶりのキャプテンを務めた今季は、開幕カードの東京戦では先発出場。先制点を挙げ、ジーコに次ぐ歴代2位の39歳5カ月21日での得点をマークした。ただ足の負傷もあり、リーグ戦12試合出場で3得点。市原(現千葉)時代の98年に、当時のJ1最年少記録となる16歳10カ月30日でデビュー。右足から放たれる正確無比なキックは芸術的で、幾度もファンを魅了してきた。

熱き男が、ピッチを去る。15年3月4日、埼玉スタジアム。公式戦3連敗を喫した直後、阿部はスタンドのサポーターのところに向かった。怒号飛び交う中、ファンの気持ちを全身で受け止めた。「まず勝たなきゃダメなんだよ。俺たちやるから。だから一緒に戦って」と声を張り上げた。「とにかく、1勝しなきゃ何も始まらないんだよ。次は絶対に勝つから」。地声で熱き思いを飛ばした。

闘志をみなぎらせる一方、温かい人柄で、ファンのみならず、誰からも愛された。「阿部ちゃん」の愛称で、老若男女から親しまれた。屈託のない笑顔で、人々の心をつかんできた。

10年W杯ではアンカー(守備的MF)を務め、16強に貢献。DF、MFなど、自身の幅を広めた。歴代4位となるJ1通算589試合出場を果たしたレジェンド。24年目のシーズンで、幕を閉じることを決めた。

 

◆阿部勇樹(あべ・ゆうき)1981年(昭56)9月6日、千葉県生まれ。市原(現千葉)ユース時代の98年にJデビュー。千葉で05、06年にナビスコ杯連覇。浦和に加入した07年はACL優勝。10年にイングランドのレスターへ移籍し、12年に浦和復帰。日本代表の国際Aマッチは10年W杯南アフリカ大会など53試合で3得点。178センチ、77キロ。