2022年はサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会(11月21日開幕)が開催される。元日本代表のコンサドーレ札幌MF小野伸二(42)が、アジア最終予選でW杯切符獲得を目指すサムライブルーにエールを送った。注目する若手選手を挙げ、日本の7大会連続出場を期待する。【取材・構成=保坂果那】

「絶対に負けられない戦い」を誰よりも知り、勝ち抜いてきた小野だからこそ、現在の日本代表の思いを理解する。1日現在、アジア最終予選でB組2位。W杯出場権獲得圏内だが、油断はできない状況だ。昨年9月2日の初戦、ホームでのオマーン戦は0-1の黒星発進だった。

小野 勝つことが当たり前と思われている中で戦うのは、非常に難しいものがある。初戦敗れてからみんな「どうなんだろう日本代表」と思っていたと思うけど、ここ2試合は勝って2位に上がった。自分たちに非常に自信がついてきたと思う。プレッシャーがきつい中でやるのは自分も経験しているからわかる。とにかく選手たちは自分たちの力を信じて、日本国民はそれを信じて応援して、一緒になってW杯に向かっていけるようにと思う。

格下相手に苦戦している原因をこう分析し、戦い方をアドバイスする。

小野 相手も努力してくる。そういう意味では日本は一番警戒されていると思う。自分たちはそれでも勝たなきゃいけないというのがある。そういうものに立ち向かっていい試合、いい結果にして欲しい。

6試合を終えて4勝2敗。複数失点はないが、複数得点も1試合のみと少ない。日本人FWの得点力不足がささやかれる。

小野 それってずっと言われていること。今になって、というわけではない。でも点が入っている時は入っているので、そこらへんは集中力や最後の質になってくる。とにかくみんなで点を取るための共通理解をしていると思う。いいものを見せて欲しいなと思う。シュートは打たなきゃ入らない。これからどういう試合展開を繰り広げてくれるか楽しみ。

2人の快足アタッカーを注目選手に挙げた。MF伊東純也(28=ゲンク)とMF三笘薫(24=サンジロワーズ)だ。直近の11月17日アウェー、オマーン戦(1○0)で伊東が決勝の2戦連発、A代表デビュー戦だった三笘がアシストした。

小野 三笘選手はちょっと人と違うプレーができている。人を魅了するドリブルを見せてくれる。楽しんでいる。あとは伊東選手は攻撃から守備からいろんなところで顔を出して戦っている姿は頼もしい。

今年初の代表活動となる21日国際親善試合ウズベキスタン戦(埼玉)ののち、27日からアジア最終予選が再開する。突破を心から願っている。

小野 先のことより目の前の1戦をどう戦うかにフォーカスを持っていった方がいい。今まで戦った課題もみんなわかっていると思う。みんなでしっかりピッチの上で改善したことを証明して欲しい。

◆MF小野とW杯 3度出場。98年フランス大会ジャマイカ戦で18歳272日で日本代表史上最年少出場を果たした。02年日韓大会では日本史上初の16強に貢献。06年ドイツ大会でもメンバー入りした。国際Aマッチは通算56試合6得点。

<今年は「楽しむ」>

札幌MF小野は22年の抱負を「楽しむ」と掲げた。ベテランは現役を続行し、今季も赤黒ユニホームを着てピッチに立つ。練習なしの1発で書き初めに思いをしたためた。「基本的に自分のモットーが『楽しむ』。サッカーだけではなく、いろんなことを楽しむ。日常でしっかり表現できるように、いろんなことを楽しんでいい1年にしたい」と口にした。

昨季は負傷離脱なく、1年間を完走した。「キャンプから大きなケガなく最後まで出来たのはすごくうれしかった。まだまだ若い選手たちに負けられない」。1月の沖縄キャンプから充実した練習をこなし、順調だった。だからこそ「今年もいい準備をして1年戦える体づくりをしたい」と意気込む。昨年6月の天皇杯で大会最年長得点を記録するなど、右足に鈍りはない。

約1年半ぶりに復帰した札幌で感じたのはチームの可能性だった。「課題はまだまだたくさんあるけど、1人1人の能力やポテンシャルはいいものを持っている選手がたくさんいる。僕自身も一緒にトレーニングしながら手助けできたらいいなと思う」と、今季も若手の成長のためならアドバイスを惜しまないつもりだ。

それだけに昨季の10位フィニッシュには悔しさを見せる。「1ケタやACLを狙える位置に行けなかったのはすごく残念。見ている人たちには楽しいサッカーを見せられたと思うけど、今年はACLを狙える位置に必ず行く」と約束する。「僕はサッカーが好き。チームが契約してくれる限りサッカーをやり続けたい」。新年への希望にあふれた目はキラキラしていた。