アルビレックス新潟で01年からチームを支えるのは渡辺基治コーチ(43)だ。現チームの中で唯一、03年のJ2優勝でのJ1昇格、17年の降格も経験。12人の監督の下で働き、2度目のJ2優勝には感慨深いものがあった。

   ◇   ◇   ◇  

「(今季は)目の前の相手に全力で挑み続けた結果。何年も積み上げたものがあるから今がある。03年に似た一体感があった」

03年は鋭いカウンターを武器にマルクスがゴールを量産(32得点)。今季はスタイルが異なった。

「サッカーは進化するし、戦い方や選手も違う。今年の強さは誰が出てもチーム力が落ちなかったこと。攻守の切り替えやゴール前にかける人数の多さ、即時奪還。隙を与えず隙を突く、といったことを練習から取り組んだ」

17年、ホームで勝利も降格が決まった最終戦を鮮明に覚えている。

「試合後、サポーターは雨の中でも歌い続けてくれた。あれで下は向けない、前を向かなければならないと思った」

だがその後、監督交代が続き、チームは浮上できなかった。

「多くの監督、選手が勝利を目指して必死だった。サッカーはどれも間違いではなく、失敗はなかった。ただ練習の成果を試合で体現できていたかというとそうではなかったかも」

松橋監督は練習の重要さを選手に伝え続けた。

「フィジカル面やプレーの質の向上。練習はあくまでJ1基準。勝利に固執する姿勢が植えつけられた。ベテランと若手がバランスよく融合した。球際の激しさやアグレッシブさ、攻守の切り替えはどの監督も求めてきた部分。この新潟の伝統は今も継続、進化。攻-守-攻の切り替えが連続するようになった」

来季以降はJ1優勝、ACL出場が目標になる。

「地域貢献、子どもたちのサッカー熱をさらに上げるためにも日々の積み重ねを大切にしていきたい」

◆渡辺基治(わたなべ・もとはる)1979年(昭54)6月5日生まれ、新潟県出身。新潟工で全国高校サッカー選手権に2度出場。3年時は主将。卒業後は2年間ブラジルへサッカー留学し、01年にアルビレックス新潟入社。通訳を務めながら各分野の分析を担う。15年アシスタントコーチ兼任になり、21年からコーチで今季はセットプレー担当。