近江(滋賀)が、技巧派集団の昌平(埼玉)に“ジャイキリ”を狙ったが、番狂わせには、あと1歩及ばなかった。

学校としてサッカー部の強化7年目で、指揮官は清水エスパルスなどでプレーした元プロの前田高孝監督(37)。粗削りな選手を鍛え、後ろからつなぎ、果敢にプレスをかけるアグレッシブなスタイルをつくりあげてきた。

強豪校を倒し、全国にインパクトを残そうと全国の舞台に来たが、1-1の後半34分に失点し、ロスタイムにも失点。力尽きた。

前田監督は「昌平さんを倒すためには、前からいかないとダメという結論になりました」とプレスの意図を語り「強豪を倒して日本代表ではないですけど、新しい景色を見たかった。まだ足りなかったということ」と振り返った。

近江と言えば全国的に野球部が有名。だが、全国の舞台でサッカー部もしっかりと爪痕を残した。対戦した昌平の藤島崇之監督は「近江高校の技術が高かった。ショートパスの局面、取られた瞬間の切り替えの速さ。分析以上に素晴らしく、見習わなくてはいけない」と話し、昌平の各選手も「中盤がうまくて、オオッと思った」と話したほどだ。

近江の主将でFW岡田凉吾(3年)は「近江のサッカーは有名ではない。みんな、後ろから蹴ると思っていたと思う。でも、しっかり全国で、強豪校相手にできるところは見せられたと思う」と胸を張った。

それでも、前田監督は悔しさを口にする。「初出場した2年前も、神村学園さんにいい試合をした。でも、勝たないと」。

大会前に、前田監督は選手たちに「昌平と、その次に上がってくるであろう前橋育英には本気で取りに行くぞ。その先の大津は知らん」と話した。この2試合にすべてをかけ、分析など万全な準備をしてきた。

ジャイキリで新しい景色を-。指揮官の期待に応え、選手はアグレッシブに戦った。勝てはしなかったが、十分にインパクトを残した。前田監督は「この2つを倒したらインパクトがある。インパクトを与えたいんですよね」と話す一方で「このチームは、技術の荒さはあったが、すごくまとまっていい雰囲気で取り組んでいた。毎日、こつこつやって夏以降にぐっと伸びた。あらためて1日の練習を一生懸命やれば、成長すると教えてもらった気がする」。

ピッチ外ではユニークな監督だ。試合後、ロッカールームで選手の前で「昌平を、どのチームより追い詰めるところまでいけた。本当によくやった」と話すと、GK野村仁人が「もっとこのチームでやりたかった」と号泣。前田監督は「じゃ、明日練習試合を組もうか」と返した。

時には厳しく、時には明るく。主将の岡田は「近江高校サッカー部はビー・パイレーツ(海賊になれ)という言葉がモットー。一番、海賊だったのは、前田監督でした」。前田監督が来年、どんなチームをつくって全国の舞台に戻ってくるのか-。近江のサッカー部はまだまだ強くなる。【岩田千代巳】

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