今季で30周年を迎えたJリーグが17日、開幕する。火ぶたを切る一戦は、昨季王者の横浜が2位川崎Fのホームに乗り込む。直近の6シーズンでタイトルを奪い合ってきた両軍によるいきなりの“頂上決戦”。93年のJリーグ開幕戦でヴェルディ川崎(現東京V)を破った横浜が、節目の年の1戦で再び“川崎”を破り、連覇への好スタートを決めるか。30年前の富士通サッカー部からJ常勝チームとなった川崎Fが、王座奪回への1勝をつかむか。注目の神奈川ダービーから、23年シーズンがいよいよスタートする。

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始まりはプレハブ平屋のクラブハウスだった。30年の時を経て、常勝軍団となった川崎Fが、チャレンジャーとして開幕・横浜戦に挑む。鬼木達監督は「34分の1と考えていない。ぶつかっていくだけ」とうなずいた。

新たな歴史を刻む。大黒柱だったDF谷口は、このオフにカタールへ移籍した。FWレアンドロ・ダミアンと小林は、ともに故障で離脱中。見慣れた顔ぶれは、開幕のピッチにいない。ただ、FW宮代が3年ぶりに武者修行から帰ってきた。昨季は期限付き移籍先の鳥栖で22試合で8得点をマーク。指揮官は、下部組織育ちの22歳に「飛躍の年になるんじゃないかなと感じている」と期待を寄せる。横浜戦では1トップで先発起用される見込みで、チームの新たな顔の座をうかがう。

リーグ4度優勝も、オリジナル10ではない。Jリーグ発足当時は、まだ富士通サッカー部だった。J参戦後も集客は簡単ではなかった。地元の本屋に無料のチケットを置いたこともあった。あれから約30年。今回の開幕戦チケットは、一般販売後、5分以内で完売した。地域密着を徹底し続けてきたたまものだった。

今では立派な設備を誇る麻生グラウンドも、かつては野生動物たちの“遊び場”だった。度々ゴールのネットが切れていたため、グラウンドに設置されたカメラを確認すると、夜中にタヌキが徘徊(はいかい)。オオカミの尿で近づけないようにしたことも懐かしい。紆余(うよ)曲折を経て、つくりあげてきた川崎F。人気と実力を手にして迎えたJ30周年。再び王座を奪還する。【栗田尚樹】

◆オリジナル10 93年のJリーグ開幕時から参加する10クラブで、鹿島、浦和、市原(現千葉)、V川崎(現東京V)、横浜M(現横浜)、横浜F、清水、名古屋、G大阪、広島を指す。横浜Fは99年に出資会社の撤退によって横浜Mに吸収合併された。同年にJ2が創設され、J2降格の経験がないのは鹿島、横浜の2チーム。J1優勝回数は鹿島が最多8度、横浜が5度。4度優勝の川崎FはJ2創設時に参入し、00年にJ1初昇格を果たした。

○…川崎Fの歴史をよく知る男たちが、開幕戦のピッチに立つ可能性が高まった。故障で離脱していた在籍7年目のMF家長と川崎F一筋13年目の大島が、ともにチームに合流した。鬼木監督は「徐々に上がってきている。非常にいい状態かなと思います」と説明。攻撃にアクセントを加える“矛”の2人を中心に、横浜の“盾”を打ち破る。

【Jリーグ記者予想】優勝1番人気は鹿島 4人が常勝軍団の復活推し 横浜連覇0人も平均順位首位