最後の最後まで止まらない運動量で、ヴィッセル神戸がサンフレッチェ広島との上位対決を制した。

後半2分、カウンターでチャンスをつくり、右サイドでFW武藤嘉紀(30)が受ける。この局面で、武藤を追い越すまでの動きを見せたのがMF山口蛍(32)だった。「仕掛けようと思ったけど、山口選手の2列目からのランニングが見えた。あそこについていけるDFは、ほぼいない。ゴールにつながるというのがお互いわかっていた」。その動きを見逃さなかった武藤からのアーリークロスが、広島のオウンゴールを誘った。

後半ロスタイムには、スローインのボールを受けたFW大迫勇也(32)が巧みなキープからスペースにラストパス。ここに武藤が抜け出した。左へパスかと思われたが、突破を選択。「左に相手もいたので。自分で切り返してみたら、かなり景色が広がっていた」。あとは豪快に右足を振り抜き、ゴール左に決めた。

「走る神戸」の中でも群を抜いているのが、武藤と山口の2人だ。この試合での走行距離は、山口が両軍最長の11・623キロ、武藤が11・561キロで続いた。スプリント数も武藤が23本、山口が22本と驚異の数字。武藤は「相手がきつい時に走り勝つのが、僕や山口選手。それができるので。相手がきつければきついほど、僕らも燃える。ゴールは最後まで頑張って走ったご褒美が来たのかな」と爽やかに言ってのけた。

90分を通して走り抜くことができ、終了間際にパンチ力のあるシュートを打てるのには理由がある。「身体のケア、食事、すべてにおいて100パーセントやっている自負はある」と話す通り、すべてを注いでいる。

そこに今季は、パワーや瞬発力、神経の反応に効果があるとされる初動負荷トレーニングに定期的に取り組めている。昨季は負傷により十分にこなせなかったが、今季は毎週欠かさず行っている。「100パーセントの力が入った後に止まったり、次の動きにスムーズにつなげられる。自分がドリブルして急に止まった時に相手が付いてこられないというのがわかった」。確かな変化を感じており、この日の2得点もこの身体のキレから生み出された。

アグレッシブな動きで神戸をけん引する武藤は、勝てる集団になるための労も惜しまない。「僕ら経験ある選手が、厳しく接して教えることは教えて、チームとして底上げできればいい」。限界を感じさせないほどの動きを見せる背番号11は、これからも走り続ける。【永田淳】