元スペイン代表のMFアンドレス・イニエスタ(39)が、神戸での最終戦を戦った。札幌に先制を許す展開で、華やかなプレーでラストを飾ることはできなかったが、神戸での5年間の感謝を表現した。後半12分に退く際には、スタジアム中からの拍手が鳴りやまなかった。18年から5年間在籍して神戸を大きくしたレジェンドは、最後まで愛し、愛された神戸での役割を終えた。

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次の夢は「神戸イニエスタ監督」の誕生へ。

21年8月にイニエスタに実施した個別インタビューで、引退後、クラブや代表監督就任への興味について聞いた。

「毎朝、起床した際に『私に監督業はある』『いや、ないかな~』など、気持ちが日によって変わる。でも言えるのは、監督になる可能性はある」

18年に神戸入りし、19年から5年連続で主将を務めてきた。「魔法のつえ」と称される世界最高峰のパスワークはもちろん、「魔法の言葉」が存在する。言葉数は少ないが、冷静に、的確に仲間へ助言できる。

21年5月、飲水タイム中にベンチスタートのイニエスタが、先発のフェルマーレンに助言を送る場面があった。土壇場、左足から来日初ゴールが生まれた。

物事を俯瞰(ふかん)するのが好き。生まれ変われば、次はどのポジションをやりたいか問われ、センターバックと即答する。その頭脳を、指導力を、存在自体がカリスマのイニエスタが、大好きな神戸の街で生かさない手はない。

5月の退団会見では明言している。

「(神戸とは)永遠の別れではなく、関係はこれからも続く。今後は違った形、角度からサポートしていければ」

あと数年プレーし、背番号8の指揮官が神戸に誕生すれば、これ以上の物語はない。【横田和幸】