被災地の故郷にサッカーで元気な姿を届ける-。1日午後4時10分ごろ、石川県志賀町で最大震度7などの「能登半島地震」(推定M7・6、震源の深さ16キロ)が発生した。

石川代表の星稜は1-4で市船橋(千葉)に敗れたが、1点を追う前半29分に同県野々市市出身のMF山口晴(2年)が得点。選手らは不安を抱えた中でも最後まで諦めない姿勢を貫き、スタンドの友情応援も背中を押した。青森山田や神村学園などが順当に勝ち上がり、昨年の優勝校・岡山学芸館は初出場の名古屋(愛知)にPK戦で敗れた。準々決勝は明日4日に行われる。

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力は出し切った。1得点を挙げた山口も、闘志むき出しにゴール前に飛び込んだ。左からのグラウンダークロスに転がるように足を伸ばしてネットを揺らした。「前からの守備やパスをつなぐサッカーが通用する時間もあった。取り組んできたことが出せる時間も多かった」。後半は突き放されたが、故郷の石川でサッカーに打ち込んできた思いは、ピッチで体現できた。

前夜には選手にも「能登半島地震」被害の知らせが届いた。不安な気持ちを拭い去り、再度集中力を高めた。河合伸幸監督(41)は宿舎での様子を「全員が家族と連絡が取れていたので落ち着いて過ごしていた」と明かし、「サッカーをするという本来の目的がありここに来ている。難しい部分がありながらも切り替えて臨んだ。小細工せず、うちらしさは出せた」。20年前に本田圭佑を擁しても準決勝でPK負けした市船橋の厚い壁にまたもはね返されたが、必死に食らいついた選手たちをたたえた。

地元からの応援団約300人は足止めとなった。だが、星稜同窓会・関東支部の公式X(旧ツイッター)の呼びかけを見た関東在住OBや関係者、さらにJ1柏、J2千葉のサポーターも集結した。日大藤沢(神奈川)などのサッカー部も駆けつけてくれた。同監督は「急な出来事にも対応していただいたのはサッカーの力。最高の舞台をつくり上げていただいた」と感謝した。

山口は「応援に来られなかった仲間からLINEで励まされたし、他のチームに応援されたのは初めての経験。すごいやる気が出た」と恩返しの一発に胸を張った。スタメン11人中7人が2年生。「大舞台を経験でき自信もついた。来年、自分が有名になって必ずここに戻って来る」。故郷に戻り、さらに心身ともに強くなる決意を固めた。【小林忠】

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