初優勝を狙った「琵琶湖の海賊」近江(滋賀)が散った。

高円宮杯U-18プレミアリーグに続く2冠を狙った世代最強の青森山田に1-3で敗れた。滋賀県勢として2005年(平17)年度に「セクシー・フットボール」野洲以来、18大会ぶりの栄冠が期待されたが、高校サッカー界のラスボスの牙城は高かった。

実力校同士の最終決戦。序盤から一進一退の攻防が続いたが、前半35分に青森山田に均衡を破られた。右サイドからMF杉本英誉(ひでたか、3年)がゴール前へ送ったパスからMF福島健太(3年)が胸でワントラップ。すぐさま右足出豪快に決められた。

青森山田のプレスに苦しんだが、前半終了間際に相手ゴール前へと押し込むと、複数選手がエリア内に入ってシュートを狙ったが、次々と現れる緑の壁にブロックされた。後半に向けて近江は1トップのFW小山真尋(3年)に代えてMF山本諒(2年)を投入。前線に流動性を加えると持ち前の連動性ある攻撃が生まれた。

すると後半2分、MF浅井晴孔(はく、3年)がドリブルで仕掛けて、前へ飛び出したDF金山耀大(3年)へスルーパス。右サイドを縦抜けだし、ゴール前へグラウンダーの折り返し。ファーサイドに走りこんだ途中出場の山本が同点ゴールを決めた。前田高孝監督(38)の采配が的中した。

次の勝ち越し点を狙い、どんどん前へ飛び出す「セクシー」ならぬ「パイレーツ・フットボール」を展開。大観衆で埋まった国立のファンの声援を背に、どんどん攻めた。しかし後半15分、中央から相手エースFW米谷壮史(3年)にドリブル突破され、最後はGK山崎もかわされてゴールを奪われた。

さらに後半25分、敵陣でのCKをクリアされてカウンター攻撃を食らう。一気にボールを運ばれ、最後はMF杉本秀誉(3年)の左足シュートがゴール前に戻った選手に当たり、角度が変わってゴールイン。不運なオウンゴールを喫し、2点差となった。

初戦からインターハイ3位の日大藤沢(神奈川)、インターハイ優勝の明秀学園日立(茨城)、前回4強の神村学園(鹿児島)、地元東京の堀越という強敵を次々と撃破。前田監督が「ここまで来るとは思わなかった」という想定外の出費で、遠征費が底をついた。決勝を前に緊急のクラウドファウンディングを実施。「黒髭の親分」前田高孝監督の呼びかけに、試合前までに目標額の1000万円を上回る寄付金が集まっていた。

温かな全国からの支援で「財宝」を手にし、悲願の初優勝に向けてムードは最高潮だった。国立の大舞台にも勇敢に前に出て戦ったが、青森山田の前に最後に力尽きた。

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