磐田のGK川口能活(32)が、節目の試合で「褒めて」チームを勝たす。10日の新潟戦(東北電ス、午後7時開始予定)で史上32人目、GKとしては史上3人目のJ1通算300試合出場を達成する。そんな快挙を前に、川口も変身を決意。前節川崎F戦で4失点と大敗し、沈みがちな雰囲気をもり立てるべく「怒れる男」から「褒める男」になって、チームを勝利に導く。

 過去を振り返れば、悔しさの方が強かった。その思いが、川口を駆り立てていた。新潟戦で迎えるJ1通算300試合目。節目を前に「自分1人の力ではないし、多くの人に支えられてできたこと」と感謝した後に、加えた。「出るだけじゃなく、勝ちたい。勝利を求めていきたいんです。(05年に磐田に移籍して)貢献できている試合は、まだ少ないですから」。心は誰より、勝利に飢えていた。

 299試合。満足ばかりではなかった。GKという位置柄、失点に直結するミスも犯した。ただ、下は向かなかった。「ミスを恐れずにやるのが自分のスタイル。積極さがなくなったら自分じゃない」。だからこそ、川崎F戦であきらめの雰囲気を見せた若手に言いたかった。「ミスは誰でもあるし、僕はしょっちゅうしている。空回りしてもいいんです。ミスを恐れない空回りなら、いくらでもサポートしますから」。

 そのために変わる決意をした。これまでは後方で、ゲキを飛ばすことで味方を鼓舞した。だが、沈んだ空気を戻すため、299試合分の経験から導き出した答えは「褒める」。「若い選手はのびのびやればいい。サッカーが好きで、楽しくやっているわけですから。いいものを持っている。そのよさを出させたい」。アウェー新潟戦は過去3勝1分け。今季2度目の連敗は阻止しなければいけない。「安定したパフォーマンスだけでなく、プラスアルファを出していきたい」。褒めて持ち上げて。いい気分にさせた川口が、節目を飾る。【今村健人】