<プレナスなでしこリーグ:仙台レディース4-0吉備国際大>◇第10節◇8日◇宮城県サッカー場

 すべてが報われた。仙台レディースが吉備国際大に快勝し、後半戦白星発進した。前半9分にMF田原のぞみ(25)が今季リーグ戦初ゴール。3度にわたる膝の大ケガを乗り越えた背番号7が移籍後リーグ戦初出場で結果を出すと、チームは後半も攻撃の手を緩めずに今季最多4得点。長期離脱していたMF鮫島彩(26)が復帰を果たし、順位も3位に浮上と目標の後半戦9試合全勝へ最高のスタートを切った。

 苦労人がゴールラッシュの口火を切った。前半9分、井上の落としを右足で優しくミート。緩やかな弧を描いたミドルシュートが、ネットを揺らした。「振り抜くと浮いてしまうと思ったので、インサイドキックでコースを狙いました。みんなには『すごい置きにいったね』と言われましたけど、うれしかった」。試合後も終始ニコニコで幸せオーラを振りまいた。

 愛嬌(あいきょう)あふれる笑顔の裏で、壮絶なケガとの闘いを乗り越えてきた。これまで左、右、右と膝の前十字靱帯(じんたい)を3度断裂。3度目の手術は昨年2月。仙台に移籍した直後だった。一般的にはハムストリングの腱(けん)を移植するが、前年にも同じ箇所を痛めていた田原には、移植できる腱が残っていなかった。そのため、痛みが激しく、筋力が低下するとして医師もあまり勧めていない膝蓋腱(しつがいけん)の移植を決断。「それでもサッカーを続けたかったんです」というひと言には重みが宿る。

 5月25日のなでしこリーグ杯INAC神戸戦で復帰。7月のリーグ杯岡山湯郷戦でゴールを決めるなど復活への階段を着実に上り、この日、スタメンでリーグ戦初出場を果たした。今季のチームには小山、嘉数と前十字靱帯の故障者が続出。田原は自身の経験も交えてアドバイスを送りながら、リハビリに付き合うこともあるという。だからこそ、鮫島が「ノン(田原)が決めたことが、心からうれしい」と話すように、仲間の信頼も厚い。

 チームは後半に3点を追加し、守備でも天野の好セーブなどで完封。千葉監督は「最高のゲーム」と手応えをにじませる。今後も右サイドの軸として期待がかかる田原は「(東京電力)マリーゼ時代から応援してくれた方や家族にも心配をかけたので、これから頑張っていきたい」と力強く進撃を誓った。【亀山泰宏】