<J1:清水1-3G大阪>◇最終節◇3日◇アウスタ

 西野ガンバが白星で終えた。優勝の可能性を残していたG大阪は清水に逆転勝利。奇跡Vへの最低条件はクリアしたが、首位柏、2位名古屋が勝ったため6年ぶりの制覇はならなかった。今季限りで退任する西野朗監督(56)にとって、10年間指揮したG大阪での最後の一戦。試合後は選手らが指揮官を胴上げした。クラブを日本屈指の強豪に変貌させた名将と、涙の別れとなった。

 優勝を逃した。それでも「西野ガンバ」のスタイルを貫き、最後は白星で送り出した。泣き顔のイレブンが集まり、逃げようとする指揮官をつかまえる。10年分のサヨウナラ…。涙のような霧雨の中、4度舞った。思いを背中で感じた照れ屋の指揮官は、第三者の口ぶりで感謝した。

 西野監督

 やめてくれ、って言ったんですが。でも指導者でこういうことはないし…本当はうれしいと思います。そんな気持ちはあります。

 最後まで「超攻撃」だった。この日も逆転勝ち。「貪欲に点を取りにいく姿勢を失わなかった。素晴らしい」と褒めた。泣き崩れる選手に駆け寄り、慰めた。02年1月20日の就任会見から3605日。当時リーグの“お荷物”とまでいわれたクラブを「ぬるま湯体質」とぶった切った。選手とは何度も衝突。本来は情に厚い男が鬼に徹した。一方で毎シーズン後は選手の家族へ「ファミリーで戦っているから」と人数分のプレゼントを贈る。一体となって強豪に作り上げた。

 西野監督

 楽しいとは言いがたいけど、いろんな人のサポートがあってここまでできた。大阪の「お」の字くらいは分かったかな。

 40代半ばだった男前も、少しだけシワが増えた。だがJ歴代1位239の勝利数を残す名将はまだ56歳だ。「僕は(前中日の)落合監督みたいにサラリとは言えない。今はバーンアウト(燃え尽き症候群)な状態なのでエネルギーもない。でも10年で区切られると性に合わないですね」。ダンディズムいっぱいの西野朗には、ピッチの上が一番似合っている。【近間康隆】