開幕したワールドカップ(W杯)カタール大会で、LGBTなど性的少数者を象徴する虹色を用いたTシャツなどを着用していたファンらが、スタジアムへの入場を拒否されたことが分かり物議を醸していると、米紙ワシントン・ポストが21日に伝えている。

同紙によると、21日に行われた米国-ウェールズ戦で米国人の記者やウェールズの元プロサッカー選手ローラ・マカリスターさんら複数の観客の、LGBTのシンボルカラーのTシャツなどの着用を巡ってトラブルが起きていたようだ。

カタールでは法律で同性愛が禁じられているというが、国際サッカー連盟(FIFA)の規則に従ってW杯期間中は虹色を身につけたり、スタジアムへの旗の持ち込みも認めており、観客は表現の自由が保障されていた。

米国人記者のグラント・ウォール氏は、虹色を用いたTシャツを着用していたため、警備員に止められ、30分間にわたって拘束されたとツイッターに投稿。最終的に入場が認められ、メディアセンターにいると虹色のTシャツを着用した自撮り写真を公開したが、「不必要な試練」を受けたと当局を批判している。

マカリスターさんは、虹色を用いた帽子をかぶっていたため、治安当局によってスタジアムへの入場を拒否されたという。

セキュリティーを通過する際に複数の警備員から帽子を脱がない限り入場はできないと言われ、最終的に帽子を隠して入場することが認められたとコメント。英メディアITVのインタビューで、当局から「虹色のシンボルは禁止されている」と言われたと述べている。

試合会場に向かう地下鉄の中で、虹色の旗を手にしていた米国人は、大会ボランティア2人から「カタールの文化を尊重するために旗を隠すよう」求められたという。拒否すると、1人から嫌みを言われたという。その後も、別の乗客から旗を隠すように迫られたといい、再び拒否すると近づいてきてドアに押しつけられる暴行を受けたと同紙に語っている。

「悲しい」と語り、身の危険を感じるため、次戦に旗を持って行くことが怖いと述べている。

観客のみならず、選手もLGBTなど性的少数者の権利を訴える虹色の腕章を着用した場合、FIFAから処分を受けるとの警告を受けたとしてイングランドやドイツなど欧州7チームが腕章の着用を断念したと発表し、批判が噴出している。

同性愛を禁止する同国に抗議するためイングランド主将のFWハリー・ケーンらが、多様性を推進する運動の一環として腕章を着用する予定だったという。

(ロサンゼルス=千歳香奈子)