【ドーハ(カタール)1日】願っていた。

「1ミリかかっていればいいな、と思いました」。

日本代表MF三笘薫(25=ブライトン)は、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の末にゴールが認められると、喜びを爆発させた。

後半6分。ボールを目がけ、懸命に芝を蹴った。右サイドからの堂安のグラウンダーのパス。ゴール前では合わせられず、左サイドへ流れた。ゴールラインを割ったかどうかのギリギリのところで、体勢を崩しながらも左足で折り返した。ほんのわずか、ライン上に触れていたボール。必死に足を伸ばして蹴り上げた先に、MF田中が詰めていた。

「なんでああいうところに(田中が)いるか分からないですけど。守備で頑張ってましたし、見えないところで頑張っていたところが、点につながった。ご褒美だと思います」

あと1秒でも遅ければ間に合っていなかった折り返し。ゴールに運んだのは、小学生時代のさぎぬまFC、そして下部組織から川崎フロンターレと、長い時間をともに過ごした田中だった。試合後は抱き合って、勝利を喜んだ。

小学6年生の時に、追ってきたミツバチ2匹を振り切った“伝説”を持つ三笘。この試合では自慢の足で、スペインDFたちを振り切った。0-1の後半開始からピッチに立ち、武器が輝きを放った。

同25分、自陣からボールを持つとぐんぐん加速した。DF1人を振り切って敵陣へ切り込み、中央のFW浅野へ完璧なクロス。惜しくもあと1歩、タイミングは合わなかったが、三笘のスピードがチームに勢いをもたらした。

スペインは日本が東京五輪準決勝で敗れた相手。それでも、その悔しさよりも、この2週間で芽生えた思いが上回った。もっと、このチームで戦いたい-。

「(チームは)徐々にまとまってきて、(1次リーグ)3試合で終わるのはもったいない。素晴らしい選手がいる中で、また4年待つのは僕も苦しい。みんなが全盛期のときのチャンスは逃したくない」

史上初となる2大会連続決勝トーナメント進出。「ちょっと足が長くてよかったなと思いました」。ちゃめっ気たっぷりに振り返った、勝利に導いたギリギリの折り返し。日本代表のJOKERが、大きな仕事をやってくれた。【磯綾乃】

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