ブラジル代表FWネイマール(30=パリ・サンジェルマン)が、子どものように泣いていた。何度も目を拭い、こぼれる涙は止まらない。ピッチで膝を抱え、最後まで立ち上がることができなかった。

つかみかけた勝利が、手のひらからこぼれ落ちた。0-0と均衡のまま迎えた延長前半15分、自らのゴールで先制。王様ペレに並ぶ代表通算77ゴールだった。

しかし、延長後半12分に一瞬の隙を突かれて同点に追い付かれると、PK戦の末に敗れた。

最初のキッカーとなり、シュートを外したFWロドリゴを、ネイマールはたたえた。「彼は責任を負った。素晴らしい選手だ。彼は1人ではない。私たちはみんな彼とともにいる」。取り沙汰されてきた自身の代表引退については「正直、分からない。頭が熱くて、今は話すことができない」と明言しなかった。

受け入れられない現実が目の前で起きながらも、真摯(しんし)で居続けた。試合直後のピッチ。クロアチアFWペリシッチの息子が、ネイマールの元へ駆け寄った。少年は近くにいたスタッフに1度止められるも、気づいたネイマールはすぐに握手し、優しく抱き締めた。取材が行われるミックスゾーンでも、声をかけられるたびに5回以上立ち止まり、泣き腫らした目で静かに質問に答えていた。

優勝の最有力候補と目されたブラジルの戦いは8強で幕を閉じた。サッカーを愛し愛されたブラジルのエースも、もうドーハを去ることになった。

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