スペインリーグでは近年、審判買収疑惑を持たれたバルセロナの「ネグレイラ事件」を始め、審判にまつわる問題が多くなってきている。

レフェリングに関しては、VARが導入されているにもかかわらず公平性を欠いた判定が下されることに、選手や監督から不満の声が頻繁に上がっている。明らかな誤審があり、そのクオリティーが疑問視されることがあるにもかかわらず、審判技術委員会(CTA)のルイス・メディナ・カンタレホ会長やスペインリーグのハビエル・テバス会長が、スペインの審判は優秀であると主張し続けていることは問題と言えるだろう。

■不可解判定にRマドリード怒り爆発

ここ最近で特に注目を集めたのは、先月1日のラ・リーガ第22節エスパニョール対レアル・マドリード戦での判定だ。カルロス・ロメロがエムバペに仕掛けた背後からの危険なタックルに対し、主審はイエローカードを提示したのみ。この危険行為に対してレッドカードと判定しなかったことにRマドリードは怒りを爆発させた。

アンチェロッティ監督は、「あのファウルに対する主審とVARの判断は不可解でしかない。あのプレーは怪我のリスクが非常に高いものだった。VARは選手を守るためにあるはずだ」と苦言を呈した。

Rマドリードもクラブの公式チャンネルで審判批判を行うと共に、スペインサッカー連盟とスペイン政府のスポーツ上級委員会に対し、抗議する旨の書簡を提出。VARと主審がやり取りした音声の提出に加え、スペインの審判制度の構造的改革も要求した。最終的にクラブに音声が提出されたのは要求から2週間も経ってのことであり、クラブはこの点にも不信感を抱いた。

スペインリーグのレフェリングに対し、バルセロナのフリック監督は「イエローカードが出されない場合、厳しいファウルが繰り返される」と選手を守るべきだと厳しく指摘し、アトレチコ・マドリードのエンリケ・セレッソ会長は「スペインの審判レベルは高い」としつつ、審判の質を低下させているのは「VARが原因だ」と意見している。

審判技術委員会は最終的に誤審があったと判断し、エスパニョール戦の主審とVARに処分を下した。しかし、スペインリーグ会長ハビエル・テバスは審判批判を繰り返すRマドリードの姿勢に対し、「彼らは正気を失っている」と非難。審判団は今の状況に辟易し、ストライキも辞さない構えがあるという。

スペインリーグはスペインサッカー界に走る緊張を緩和させるべく、第25節の全会場で、「レフェリーにリスペクトを、フットボールにリスペクトを」というスローガンが書かれた看板を設置。そこで試合前に選手たちと審判団が集合写真を撮る光景を演出し、問題の解決に努めた。

瞬時に的確な判断を下さなければならない審判の仕事は近年、VARの導入でより正確性が求められ、難しさが年々増している。日々厳しいプレッシャーに晒される大変な職業だ。では実際にスペイン1部リーグの主審はどれくらいの報酬で、この仕事を担っているのか。

2025年2月22日、ラス・パルマス対バルセロナ VARレビュー中にスクリーンを見る主審(ロイター)
2025年2月22日、ラス・パルマス対バルセロナ VARレビュー中にスクリーンを見る主審(ロイター)

■起業家、公務員、銀行員に歯科医も

今季のスペイン1部リーグでは20人が主審に任命されている。そのうち11人は本業が別にある。例えば、1部でのキャリアが13季目と最長のヒル・マンサーノやエルナンデス・エルナンデスの本業は起業家、12季目のマルティネス・ムヌエラは公務員、11季目のメレーロ・ロペスは体育教師、10季目のサンチェス・マルティネスは銀行員、デ・ブルゴス・ベンゴエチェアは歯医者と、その職業はさまざまだ。一方、アルベロラ・ロハスやクアドラ・フェルナンデスなどの9人は審判を本業としており、この傾向は特に近年、増加傾向にある。

年俸は固定で16万7904ユーロ(2686万4640円)。これに1試合ごとに4830ユーロ(約77万2800円)の報酬が加算される。問題が何もなければ年間20試合笛を吹くため、合計金額は26万4504ユーロ(約4232万640円)となる。

審判の仕事にはクラブからのレフェリング批判やサポーターからのブーイングはつきものだ。さらに近年ではSNSに家族や自宅の画像が晒され、殺害予告を受けることもある。これに対し、受け取る金額が高いのか安いのか、判断を下すのは非常に難しい。

しかし、欧州5大リーグで比較した場合、スペインの主審は最も高給取りだ。2番目はブンデスリーガの19万4000ユーロ(約3104万円)、3番目がセリエAの15万9708ユーロ(約2555万3280円)、4番目がプレミアリーグの15万7895ユーロ(約2526万3200円)。最下位はフランスリーグで14万5208ユーロ(約2323万3280円)と、スペインリーグの約半分ほどとなっている。

国際審判員に任命されている主審は上記に加え、欧州チャンピオンズリーグでは1試合ごとに7000ユーロ(約112万円)、欧州リーグでは3500ユーロ(約56万円)、欧州選手権では5000ユーロ(約80万円)から1万ユーロ(約160万円)の報酬を受け取ることになる。

その他、スペイン1部リーグの副審の年俸は7万ユーロ(約1120万円)。下のカテゴリーに目を向けると、2部リーグの主審は10万ユーロ(約1600万円)、3部リーグの主審は2万ユーロ(320万円)を年間で受け取っている。

スペインリーグの主審は5大リーグの中で最も高給取りであるものの、テクニカルなリーグであるため適切なジャッジを下すのが難しい。誤審をなくす努力は必要だが、テクノロジーが日々進化していくなかで、どこまで試合の流れを壊さずに正確なジャッジを下せるのか、審判に求められる要求は尽きることはなさそうだ。【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン初サッカー紀行」)