20年東京オリンピック(五輪)で実施されるスポーツクライミング複合の予選で、男子の藤井快(こころ、25)が大逆転の総合4位で上位6人の決勝進出を決めた。スピード、ボルダリングを終え同12位だったが、この日のリードで完登し2位。リード1位で総合首位を守った楢崎智亜(ともあ、22)、女子で同3位の野口啓代(あきよ、29)、同6位伊藤ふたば(16=いずれもTEAM au)と、今日26日に3種目全てを行う決勝に臨む。

高さ12メートルを超える壁を前に、藤井は不安だった。練習環境や遠征の兼ね合いで、リード壁に触れるのは約1カ月ぶり。それでも3分45秒後、トップホールド(突起物)にたどり着き、感謝するように2度、それをたたいた。「良かったです。それに尽きます」。決勝進出ラインに滑り込んだ。

2日前のスピードは17位。出遅れ、空いた午後はフィットネスジムに向かった。だが、前日24日のボルダリングで6位。総合成績は12位と想定外に低く「かなり絶望的なリザルト」と漏らした。選手村に戻ると、昨春結婚した妻に「そういうのやってるから、勝てないんだよ!」と日本からの電話で駄目出しされた。

試合までの過ごし方を反省し、午後はあえて部屋にこもった。休養やストレッチで準備し「焦りが強かった」と、本来は体を動かしたい自分を制止。一夜明け失敗の許されない土壇場で、堂々と力を出し切った。

スピードが苦手だが、20年東京五輪は3種目の複合で行われる。「絶対にあるシチュエーションを、前もって練習できた」。そう笑えるのも、予選通過できたからだ。今日26日の決勝は、自身初となる1日3種目。「楽しんでいけたら」と不安が消えた。【松本航】

◆複合とは 20年東京五輪で行われる方式で「スピード」「ボルダリング」「リード」の3種目で争う。スピードは高さ15メートルの壁を登るタイムを競う。ボルダリングは高さ3~5メートルの壁にさまざまな形のホールド(突起物)が設置され、複数の課題(コース)に挑んで制限時間内の完登数を争う。壁の高さ12メートル以上のリードは、制限時間内での到達高度が記録となる。

◆複合の順位決定方式 スピード、ボルダリング、リードの各種目の順位をかけ算し、総合点を算出。点数の少ない順に複合の順位をつける。例えば、スピード5位、ボルダリング1位、リード3位ならば「5×1×3」で15点。同点で並んだ場合は、直接対決で勝っている回数が多い選手が上位となる。東京五輪でも同様の形式で行われる。