陸上女子短距離の07年世界選手権代表、北風沙織(36)が、今春から新たなスタートラインに立つ。選手、コーチ、監督として13年間在籍した陸上の強豪・北海道ハイテクACを3月で退職し、新年度から「北海道ブレーメンズ陸上部」を立ち上げる。マスターズ陸上に向けたクラブチームで自身も選手として活動し、スポーツを通じた地域活性化を目指していく。

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国際大会も経験した元スプリンターが、また新たなステージに向かって駆けだした。3月で北海道ハイテクACの監督を退任。新年度からマスターズ陸上に向けた北海道ブレーメンズ陸上部を立ち上げ、活動を始めた。「大人になっても夢を諦める必要はないと思う。みんなでスポーツを楽しんでいきたい」と思いを口にする。

現在はSNS等で募集した20~60歳まで、50人ほどの陸上愛好家が参加を希望している。「陸上は主に個人スポーツですが、みんなで楽しい場にして『走りの輪』を広げていきたい」。冬期間の利用施設や活動内容などは検討中だが、今後、参加人数が増えればチーム登録や、小・中学生の部を作ることも視野に入れている。

「北海道ブレーメンズ」は、夫の和田剣吾さん(33)が昨年6月に結成した草野球チーム。そこに「陸上部」を新設し、二人三脚で活動の場を広げていく。「北海道のスポーツを盛り上げたい。スポーツを通じた地域活性化」が共通のコンセプトだ。

恵庭北高3年時に100メートル全国3冠(日本ジュニア、高校総体、国体)を達成。華々しいジュニア時代を過ごし、社会人1年目の08年織田記念では11秒42の好記録をマーク。しかし、北京五輪は標準記録を突破しながら、その後の選考会で大きく低迷。疲労骨折を発症し、3度の手術を余儀なくされるなど、数々の栄光と挫折を味わってきた。

「絶対にオリンピックに行けると思っていたが、見えない壁に当たり、暗いトンネルをさまよい、心も疲れてしまっていた。でも、だからこそ見えたものがあった。競技を愛し、楽しみ、努力をする過程が一番大事だということ。そういうものを自らの背中で伝えていきたい」。

3日に36回目の誕生日を迎えた。マスターズ陸上のアジア・世界大会への出場資格は35歳以上。「世界記録(35~40歳未満=10秒74)を狙っていきます」。ママアスリートの挑戦が再び始まる。【奥村晶治】

◆マスターズ陸上 75年にカナダ・トロントで第1回世界選手権を開催。日本では80年に日本マスターズ陸上競技連合が設立され、初代会長は日本初の五輪金メダリスト織田幹雄氏。同年に第1回全日本マスターズ選手権が開催された。男女ともに満18歳以上なら競技成績に関係なく参加できる。クラスは5歳刻みで5年ごとにクラス別の最若手となるため記録更新、上位入賞のチャンスが膨らむ。アジア・世界大会への出場資格は35歳以上。

◆北風沙織(きたかぜ・さおり)1985年(昭60)4月3日、釧路市生まれ。陸上は江別大麻小4年で始める。江別大麻中3年で全国中学女子100メートルを制覇。恵庭北高3年で同種目の日本ジュニア、高校総体、国体と全国3冠。07年世界選手権(大阪)女子400メートルリレー代表。11年のゴールデンGP川崎で日本代表の1走を務め43秒39の日本新記録樹立に貢献。12年11月に結婚。その後、引退し、出産を経て復帰。家族は夫と1男。