バルセロナ五輪女子マラソン代表決定を明日28日に控え、候補の一人、松野明美(23=ニコニコドー)が26日、熊本市火の国ハイツで「私を選んでください。メダルは取れると思います」と、前代未聞の強烈アピールをした。五輪代表は3人、既に山下佐知子(京セラ)が正式決定しているが、残り二人の中に松野が選ばれるかどうかは、きょう27日の日本陸連強化本部会での原案作りで決められる。正式決定(28日、陸連理事会)直前の、松野らしい行動ではあるが、果たして陸連側はどう受け止めるか?

 

定刻(午後2時)より5分早く、松野は記者会見場に入ってきた。ピンクのトレーニングウエアに身を包み、柔和な顔。

-選考を控えて、現在の心境は?

松野 試験の結果を待っているような感じ。やるだけのことはやった。オリンピックに向けて、精いっぱい練習に励んでいます。結果を信じるだけです。

-暑さと坂道での強さもポイントになるが?

松野 暑さは大好き。熊本の暑さのなかで練習してきました。坂についても阿蘇のすごい坂道で、50キロ走をしてきたから自信はあります。

-1万メートルで五輪に臨む気持ちは?

松野 大阪国際でマラソンの素晴らしさが分かったので、一万をやっていく気持ちはありません。(マラソンに転向して)走り込んだ足が1万の時とは変わってきた。元に戻すには1年以上はかかると思うのでバルセロナには間に合わないでしょう。

-有森さんとは親しい間柄だが?

松野 人のことを考えるより、今は自分のことで精いっぱい。でも、会った時は気軽に話をしたい。(一瞬、笑みが浮かんだが、キッパリと)できれば、大阪で一緒に走りたかった。走れば絶対に負けなかった。(小鴨とも)もう一度走ったら負けません。

-選考にもれたとき、引退という説もあるが?

松野 それでも走り続けたい。また、日本最高(2時間26分26秒=小鴨)を出したい。

-今回がダメだったらアトランタを目指すのか?

松野 えっ(と絶句。目を見張って発言はなし)。

-メダルに自信は?

松野 42・195キロを走れば、外国人選手にも負けません。世界1、2位とか、夢のようだけど、できるんじゃないかと思います。

-陸連に何か言いたいことはありますか?

松野 (キリッとした表情で)出たらメダルを取れると思ってますので、選んでください。

-今回の選考方法については?

松野 強い人は、どんな状況でも強いので、強い人を選んでほしい。私の走りに勇気づけられた、と手紙をくれる人もいた。自分のためじゃなく、国民の皆さまのために、一生懸命走りたい。

 

■ライバル好調であせり?

「沈黙は金なり、と思っていた」と岡田監督が言うように、選考の結果が正式に発表されるまで、松野サイドは取材に応じる気はなかったというが、今年1月の大阪国際女子マラソン以来、「ここまで大変なことになるとは思わなかった」と松野自身が言うように、五輪への激しい議席争いが繰り広げられることになった。

現在残り1議席を松野と有森で争っている形だが、有森は今月15日の「おかやま県民健康マラソン」で自己新をマークするなど、好調をアピールするニュースが頻繁に出てくるのに対し、松野はかたくなに沈黙を守っていた。それだけにさまざまな憶測も飛び交い、報道陣からの問い合わせにも応じ切れなくなってきたため、「松野は走る気がないのじゃないかとの問い合わせもある。この際、本人の口からメダルを目指している決意をはっきり言った方が良い」(岡田監督)と今回の会見となった。

 

<五輪マラソン代表有力候補3人のデータ比較>

小鴨由水(20=ダイハツ)171センチ、48キロ。ベスト2時間26分26秒。戦績・1戦(1位)。92年大阪国際マラソン優勝

松野明美(23=ニコニコドー)148センチ、35キロ。ベスト2時間27分02秒。戦績・1戦(2位)。88年ソウル五輪1万メートル代表、90年アジア大会1万メートル3位、92年大阪国際マラソン2位

有森裕子(25=リクルート)164センチ、48キロ。ベスト2時間28分01秒。戦績・3戦(6位、2位、4位)。91年大阪国際マラソン2位、91年世界選手権マラソン4位

 

■有森は「静かに待つ」

<有森裕子の話>今はやるべき練習トレーニングをきっちりやり、競技で発揮できることだけ考えています。代表に決まるまでは何もお話しするようなことはありませんし、28日まで静かに待ちます。(26日、千葉・船橋の合宿所で)

 

<小掛強化本部長の話> ちょうど陸連(東京・渋谷区)でテレビを見ていました。選手が、代表選考の前に話をした例がないので驚いた。選考はだれが選ばれても、落選しても残酷なものだ。必死な気持ちはよく分かる。