最終10区(23キロ)、残り約1キロからのドラマの末、法大が10位に滑り込み、ギリギリで3年ぶりにシードを獲得した。圏外の11位でたすきを受けた10区の川上有生(3年)が、最終盤で東海大をかわした。ゴールまで残り200メートル足らずから、コースを間違えそうになるなど、最後まで目が離せないレースを演出した。

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スピードの違いは明白だった。10区の残り1キロ。法大の川上が、東海大の吉冨をとらえると一気に置き去りにした。10位に浮上し、3年ぶりのシード獲得まで一直線-。ところが先導する車につられるように、残り200メートル足らずで右に曲がり始めた。思わずテレビの実況も「そっちではない!」と絶叫。誘導員が慌てて呼び止め、正規のコースに戻ると、気恥ずかしさからか、川上は控えめに両手を広げてゴールテープを切った。

通称「寺田交差点」での11年ぶりのドラマだった。11年の10区で、国学院大の寺田夏生が、この日の川上と同様に先導車につられて交差点を右折。4校で3枠のシードを争う大激戦で、寺田は一時11位に転落したが、驚異的なスパートで1人を抜いて10位に滑り込んだ。そんな名場面をつくったことから箱根駅伝ファンの間では有名な交差点。川上の走りで「寺田交差点」がツイッタートレンドで、上位にランクインした。

それでも極限の重圧の中で、コースを間違えるのは無理もない。川上は15キロ過ぎ、坪田監督から「あと8キロしかないんだぞ」など、強烈にハッパをかけられていた。ただ一方で、同監督から「自信を持っていけ。負けるわけないんだから、お前の練習で」と、後押しも受けていた。後方の監督車から、拡声器で言葉をかけられるたびに、右手を上げて応えるなど、師弟の深い絆を示していた。

今大会で出場82回目の伝統校が、苦しみながらもシードを獲得した。出場82回は同95回の中大、同91回の早大、同89回の日大に次いで4番目の多さ。近年は優勝争いから遠ざかっているが、来年は3年ぶりのシード権がある。10区間、217・1キロの最後の1キロまで争ってつかんだ権利で、1段階高いレベルを目指す。【高田文太】

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