3年ぶりに沿道での応援が復活した箱根駅伝に、全身白タイツのフリーザ軍団が戻ってきた。復路7区の二宮町(神奈川)に、人気漫画「ドラゴンボール」に登場する悪役キャラクター「フリーザ」に扮(ふん)した、名物応援コスプレイヤーたちが、走者全員に無言の声援を送り続けた。

フリーザ軍団は「われわれが現れてしまうと、人が集まってしまうため、この2年間は宇宙空間から声を出さずにランナー全員を応援していました」としっかりとマスクをつけて3年ぶりとなった沿道応援について説明。フリーザ軍団のリーダー(名前などは非公表)によると、二宮町にフリーザ族を代表して5人が「40万年前に赴任してきた」と顔色を変えずに話した。

2006年にリーダーがマイケル・ジャクソンの仮装をして沿道で応援したのがきっかけ。ただ、あまり目立たなかったので蛍光色のタイツにチェンジした。応援する場所の二宮町「押切坂」は、比較的平坦な7区でも上り坂になっており、懸命に走る選手の姿が感動的でもあり、写真撮影の名所にもなっている。

押切坂を走者が駆け抜ける午前9時ごろ、沿道は日陰になってしまう。日中でも暗めいことから、白いタイツなら目立つと思いついた。「白いタイツからの連想ゲームで、そうだ、フリーザだ、という結論になった。08年から単独でフリーザをやっていたら、いつの間にか増殖して11年には5人のフリーザ軍団になりました」とリーダーは、軍団結成までの経緯を解説した。

だが、新型コロナが拡大した21、22年は沿道応援を自粛していた。16年から平塚市のツイートネーム「安藤」さんが漫画「ドラえもん」ワンパクキャラの「ジャイアン」として参加。18年からフリーザに寄せて「ドラゴンボール」のキャラクター「魔神ブウ」に転身した。さらに19年からシャケの頭をつけて芸能活動をするフリーザ「シャケーザ」こと山口清孝さん(お笑いバンドユニット「シェイクヘッド」)も合流した。

初期フリーザ5人とシャケーザ、魔神ブウは面識はない。全員で示し合わせたわけではないが、新型コロナによる行動制限が出たたため21、22年の沿道での応援は断念していた。それぞれがリモートで応援していた。事前確認もとっていなかったが、23年は初期の5人とシャケーザ、ブウが3年ぶりに再会できた。

シャケーザは仲間2人と現れた。「ドラゴンボール」キャラの「ザーボン」の変装をしてきた女性「ジュリパン」さんと、記録撮影班としてバンドの相棒「瀬尾にゃん」もフリーザになりきった。

走者が駆け抜ける前には、押切坂にいた他の応援客からの写真撮影依頼に応じてポーズを取り続けた。応援では飛まつ感染防止の意味もあって、言葉を発することなくマスクを着用した。飛んで跳ねて、EXILEの名曲「Choo Choo TRAIN(チューチュートレイン)」の振り付けマネを披露するなど沿道や小田原方面に走る車などから「キャー、フリーザさまぁ~」「待ってたよ~」「おかえりー」などの声援を浴びた。

走者21人を見送ったフリーザ軍団は「走者に元気を送ることが目的。そして、少しでも二宮町のことを全国のみなさんに知ってもらいたい」と語り、リーダーは「箱根駅伝が続くかぎり我々はこの押切坂に戻ってくる。では、宇宙空間に」と力強く言い放った。

その言葉を耳にした他のフリーザは「あ~、言っちゃった。来年の『やる』決定なんだね」と苦笑いしていたが、「でも、来年も、その次の年も、その次も、フリーザをやる気持ちは、おそらくみんな同じですかね」と笑顔をみせていた。【寺沢卓】

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