15年世界選手権北京大会代表の前田彩里(さいり、ダイハツ)が、調整の一環で女子5000メートルに出場し、15分37秒17で2位でゴールした。31歳にして「(自己)2番目かな」という好記録を残し、「走ってみたら出ました」と笑顔を見せた。

前田は序盤から上位につけ、終盤は鍋島莉奈(29=積水化学)との一騎打ちへ。ラスト400メートルを過ぎたところで鍋島にトップを譲るも、そこから必死に食らいつき、200メートル過ぎに逆転。そのまま最後の直線へと入ったが、ゴール手前で鍋島に振り切られた。

故郷の熊本での凱旋(がいせん)レース。「5月くらいからトラックに出ていけたらいいじゃんという話もあったんですけど、熊本なので『練習でもいいから走りたい』とお願いして」。自ら出場を“志願”した試合で、2歳の長女・彩葉(いろは)ちゃんも見守る中、会場をおおいに盛り上げた。

「いろいろなところから名前を呼んでいただけて、やっぱり地元で走れて良かったなと思いました」

屈託のない笑みをはじけさせた。

20年12月に長女を出産した前田は、今年1月末の大阪国際女子マラソンで2時間25分24秒をマーク。4年ぶりのマラソン復帰レースで、24年パリオリンピック(五輪)代表選考会「MGC」(10月15日)の出場権をつかみとった。

チームスタッフからの「陸上だけにならずに『娘を6、陸上を4』くらいで」という声もあり、気張らずに競技と向き合えている。

「出産もあって、自分の気持ちも変わったりして。いい意味でリラックスしてできているかな」

目を細めながら、さわやかに笑った。

今季はMGCへ照準を合わせていく。言葉に覚悟が宿る。

「一番の目標がMGCなので、そこへ向けて、娘のことも陸上も、どちらも頑張りながら良い結果を出していけたらいいなと思います」

故郷の心地よい春風に吹かれながら、充実のスタートを切った。【藤塚大輔】