複数メダルが期待された日本勢4人は、まさかの失速で表彰台どころか、1人も入賞(8位以内)できなかった。

前回22年大会銀メダリストの池田向希(25=旭化成)は、3キロすぎからトップを独走したが、15キロ手前で優勝したアルバロ・マルティン(スペイン)に抜かれると、ズルズルと後退して15位に終わった。一方、3連覇を目指した山西利和(27=愛知製鋼)は8キロすぎに2位集団から脱落。最後までペースに乗ることができず24位と惨敗した。

スタート直前にアクシデントに見舞われた。突然、黒い雲が立ち込めて発着地点のある市街地は激しい雷雨に見舞われ、号砲が2時間も遅れ、土砂降りの中でレースが始まった。気温は5度も下がるなど気象条件はガラリと変わり、ぬれた路面にはところどころ水たまりができた。

それでも池田は序盤から果敢に飛び出した。21年東京オリンピック(五輪)も、前回大会も銀メダル。今回は「金メダル」しか見ていなかった。スタート直後から先頭に出た。167センチの小柄な体で高速ピッチを刻み続けた。3キロすぎに一人飛び出すと、5キロ地点で2位集団に10秒差、10キロ地点で15秒をつけて独走したが、蒸し暑さの中で終盤にスタミナが切れた。レース後は「トータルで力不足。こういう結果になって申し訳ない」とうなだれた。

レース前に「自分がレースをデザインしていければ」と話していた山西は、レース直前にスタートが2時間遅れたことで、心身に何らかの変調をきたしたのかもしれない。前半から体が重く、最後は優勝したマルティンに周回遅れになる屈辱を味わった。「弱すぎて……。5キロくらいから止まっちゃった。体力を根本的につけていくしかない」と振り返った。

5大会連続出場の高橋英輝(30=富士通)も21位。終わってみれば日本勢最高位は初出場の古賀友太(24=大塚製薬)の12位。来夏にはパリ・オリンピック(五輪)も控えて、同じ夏場の欧州での今大会は貴重な予行演習の場でもあった。山西は「今大会がそのままシミュレーションになる」とも話していたが、1年後の五輪へ向けて世界は想像以上に進歩していた。日本勢に大きな課題が突き付けられた惨敗。「ゆゆしき事態。どうやって世界と勝負していくか、チームとして考えていかないといけない」と、山西は危機感を募らせていた。